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人種差別

将来の夢はプロ野球選手──普通の少年は肌が白くないだけでレイプ犯に仕立て上げられた

A New Kind of Must-See TV

2019年06月19日(水)17時40分
ウィラ・パスキン

実際の冤罪事件に基づく心揺さぶる物語を監督したデュバネイ(左) ATSUSHI NISHIJIMA/NETFLIX

<肌の色ゆえに疑われた冤罪事件の実話 『ボクらを見る目』はそう遠い昔の話ではない>

89年4月19日の夜、ニューヨークのセントラルパークでジョギング中の白人女性(29)が強姦される事件が起きた。オンライン動画配信サービス大手のネットフリックスで配信中のドラマ『ボクらを見る目』は、この事件の「犯人」とされた5人の少年たちのその後を実話を基に描いている。

『セルマ』などの作品で知られる映画監督のエーバ・デュバネイが手掛けたこのドラマは、情熱と崇高さをたたえ、心揺さぶる物語だ。「テレビは楽しくあるべき」という業界の常識に逆らってはいるが、テレビがもっと込み入った手法で視聴者を教育したり挑発したりしていけないはずがない。

映画の世界では『それでも夜は明ける』や『シンドラーのリ スト』のように、見る人を巧みに(そして痛みを伴いながら) 啓発するタイプの作品があるのに、テレビではあまり見掛けない。映画は「映画館に行こう」と一度決意しさえすればいいが、テレビだと毎話、気持ちを奮い立たせてチャンネルを回し、放映中も携帯ゲームに浮気しないように気を張っていなければならない(もっとも私は感情的に距離を置かないとこのドラマを見続けることができなかったため、ゲームをしながらの視聴だったが)。

「犯行説」を信じたい警察

事件の直後から、少年たちは容疑をかけられた。彼らは14〜16歳で、現場近くに住んでいた。タブロイド紙は非行少年グループによる集団暴行だと書き立てたし、取り調べでの自白を記録したビデオもあったが、実際には彼らは無実だった。強要された自白しか証拠はなかったのに、少年たちは有色人種ゆえに手軽なスケープゴートとされ、社会的に分断され汚職と犯罪にまみれた暗黒都市の象徴となった。

デュバネイがこのドラマを制作したきっかけは、ツイッターで元少年の1人レイモンド・サ ンタナから打診されたことだった。テーマとなるのは、ニューヨーク市の刑事司法制度が無実の少年たちから何を奪ったかだ。

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ATSUSHI NISHIJIMA/NETFLIX

物語は事件当日に始まる。少年たちはいつもどおりの生活を送っていた。プロ野球選手を夢見る少年は、父とヤンキースについて語っていた。恋人とキスをした少年もいた。深い知り合いではなかったものの、5人は25人くらいの集団と共に夜、セントラルパークに繰り出した。なかにはふざけたり、自転車で通り掛かった人やホームレスの男性に嫌がらせをした少年たちもいて警察が出動する騒ぎになったが、警官たちも重大な犯罪が起きるとは感じていなかった。

状況が変わったのは、翌日の朝、暴行されて瀕死の状態になった被害者が発見されてからだ。事件を担当した地方検事補は、少年グループが事件当夜、公園にいたのは偶然の一致でないと考えた。関与を示す物証は何もなかったが、警察は少年たちが犯人だという筋書きに沿って事実をでっち上げ始めた。

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