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トランスジェンダー

父親からトランスジェンダーだと告白されたら......『トランスペアレント』の真実

2019年02月18日(月)17時00分
アンナ・メンタ

シーズン3のプレミアで笑顔を見せていたソロウェイ(左)とタンバー MICHAEL TRANーFILMMAGIC/GETTY IMAGES

<トランスジェンダードラマの生みの親が明かす舞台裏を振り返る>

アマゾン制作の『トランスペアレント』は、心と体の性が一致しないトランスジェンダーだとカミングアウトした70歳の元大学教授をめぐる画期的なドラマ。その生みの親ジル・ソロウェイは「ノンバイナリー(男性でも女性でもない)ジェンダー」だと公表して以来、「she(彼女)」ではなく「they(彼ら)」という代名詞で呼ばれている。「she でも構わないけどthey だとうれしい!」

ただし2018年10月に刊行された回顧録の題名は『彼女が欲しいもの── 欲望、力、家父長制打倒(S h e W a n t s I t : D e s i r e ,Power, and Toppling the Patriarchy)』。「もう自分をshe だとは思わないけど、題名のパワーは大好き」だと、ソロウェイは言う。

回顧録は何かと物議を醸した『トランスペアレント』の話から始まる。このドラマは、父親からトランスジェンダーだと告白されたソロウェイの実体験から生まれた。

【参考記事】写真特集:LGBTQの親を持つ子供たち

女性として生きる決意をする主人公役を誰にするか。当時は「トランスジェンダー女優を使うという発想はなかった。候補に挙がったのはケビン・クラインとか、子供の頃からテレビや映画で見ていた男性ばかり」。結局、ジェフリー・タンバーに決まったが、トランスジェンダーの人々が猛反発。ソロウェイは自分の過ちに気付いたが、後悔はしていない。「私は確かにステレオタイプを強化していた。トランスジェンダーの女性を女装した男性に演じさせた。でもジェフリーがドラマに貢献したのは事実」

ところが17年10月、ハリウッドで吹き荒れた#MeToo(私も)旋風が『トランスペアレント』にも襲来した。出演していたトランスジェンダー女優らがタンバーからセクハラを受けたと告発し、タンバーは降板。今年5月、ドラマはシーズン5限りで終了すると発表された。

「悲しい出来事だった。ジェフリーだけじゃない。多くの知人男性がこの革命で転落していった。どうか彼らに慈悲を。彼らは父権社会でいかに優遇されているかに気付けなかった」

一方、ドラマの結末では「魔法が復活する」という(ラストは映画で、との噂も)。「私自身は終わりという気はしない。むしろ始まりだと感じている」

【参考記事】LGBTへの日本の行政支援は「度が過ぎる」のか
【参考記事】LGBT最前線を行く、フランスの次なる課題とは?

[2018年12月11日号掲載]

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