最新記事

カルチャー

「本当の自分」を見てほしいのに、そうはいかない美人の辛さ

The Lady Vanishes

2019年02月19日(火)17時45分
メアリー・ケイ・シリング

エキゾチックな美しさを持つラマー SUNSET BOULEVARDーCORBIS/GETTY IMAGES

<「Wi‒Fiの原型」を開発したヘディ・ラマーの喜びと苦悩にフィクションを織り交ぜた小説が光を当てる>

一見したところ、2人の女性に大きな共通点はなさそうに見える。ミレバ・マリッチは天才物理学者アルバート・アインシュタインの最初の妻で、物静かで、自らも優秀な物理学者。ヘディ・ラマーはハリウッド黄金時代に「世界一の美女」とうたわれたことがある女優だ。

だが、2人を主人公にした小説を書いたマリー・ベネディクトによると、マリッチとラマーの間には明確な共通点がある。それは不屈の精神と、周囲が押し付ける型にはまらない強い意志、そして「影の立役者」という、現代も多くの女性が(意図せず)陥りがちな役回りだ。

弁護士から作家に転じたベネディクトは、16年にマリッチの生涯をベースにした『ジ・アザー・アインシュタイン』を、そして今年1月にラマーを主人公にした『ジ・オンリー・ウーマン・イン・ザ・ルーム』を発表した。どちらも純粋な伝記ではなく、フィクションを織り交ぜた小説という体裁を取る。

2人の女性は、それぞれ紆余曲折を経て「本当の自分」を見つけていく。マリッチは女の子が物理学を学べる場所がないセルビアの田舎町から、スイスの工科大学へと進み、アインシュタインと出会って結婚する。アインシュタインはそれから程なくして相対性理論を発表しただけに、マリッチの貢献があったのではないかとベネディクトが勘繰るのは無理もない。

一方、ラマーは世界的な映画スターとなった後に、周波数ホッピングという通信方式を発明して特許を取得する。現代の携帯電話やWi-Fi、そしてGPSにつながる基本技術だ。

nww-NW_HRM_02.jpg

19歳のラマ―と結婚した富豪マンドル(左) BETTMANN/GETTY IMAGES

ベネディクトは、ラマーがヘドウィヒ・キースラーという名前で故郷ウィーンに住んでいた時代に興味を抱く。「もちろん銀幕のスターのヘディは、『影の立役者』とは程遠い。でも、へドウィヒと名乗っていた頃は無名の存在だった」

演技を始めて間もない18歳のとき、ラマーはチェコ映画『春の調べ』(1933年)に出演して、スキャンダラスなヌードを披露。たちまち大きな話題となる。だがその翌年、オーストリアの富豪フリッツ・マンドルとさっさと結婚してしまう。

「彼女とマンドルの結婚生活は、驚きのエピソードにあふれている」と、ベネディクトは語る。マンドルは武器商人で、彼のパーティーにはムソリーニやヒトラーが来たこともあると、ラマーは自伝に書いている(その一方で、マンドルは反ナチ団体に武器を供給していたという説もある)。

【参考記事】21世紀版『美女と野獣』で描かれる現代の女性像

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エールフランスKLM、スカンジナビア航空への出資率

ワールド

ドイツ、国防強化で志願兵制度を計画 期間6カ月

ワールド

ベトナム第2四半期GDPは前年比+7.96%、輸出

ビジネス

英企業、米国への投資意欲後退 自国評価は上向く=調
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 2

    カーダシアンの顔になるため整形代60万ドル...後悔し…

  • 3

    キャサリン妃の顔に憧れ? メーガン妃のイメチェンに…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    大叔母「麗人・アン王女」を彷彿とさせる、シャーロッ…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    カーダシアンの顔になるため整形代60万ドル...後悔し…

  • 5

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプvsイラン

特集:トランプvsイラン

2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる