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5歳にして3カ国語操る子供──マルチリンガルだらけ、スイス人家庭の実態とは

2018年12月14日(金)18時15分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

写真はイメージ AnnaNahabed-iStock

<スイスでは4つの公用語のうち少なくとも2つを使いこなせるよう国が方針を示している。春香クリスティーンさんのようなマルチリンガルがごろごろいる国の秘密>

「日本に旅行したいけれど、英語ができない人が多いと聞くから少し不安だ」。筆者の周りのスイス人の声だ。21世紀になっても「英語が苦手な日本人」というステレオタイプはあまり変わっていないようだ。そんな日本人から見ると、スイスのチューリヒ(ドイツ語圏)育ちで日本語、ドイツ語、英語、フランス語を使えるマルチリンガルのタレント、春香クリスティーンさんは雲の上の存在のように感じるはず。しかし、実はスイスにはそんなマルチリンガルがごろごろいる。

マルチリンガルだらけのスイス

つい先日も、飛行機で臨席した見知らぬドイツ人が「スイスは何カ国語も話せる人がいっぱいですよね」と言っていた。ヨーロッパでも、スイス人やスイスに住む外国人の語学力の高さは有名なのだ。スイスに長年住むある日本人も「キオスクとか郵便局とか、みんな3カ国語くらいは普通に話しますね。スイス人の一般的な語学力は、たぶん日本人には想像しにくいと思います」と言う。

スイスには4つの言語圏がある。東のドイツ語、西のフランス語、南のイタリア語、そしてさらに東のロマンシュ語で、4つとも国語(公用語)だ。どこに住んでいても、この4つのうち少なくとも2つは使いこなせるようになろうというのが国の方針だ。

マルチリンガルの例を挙げると切りがないが、たとえば、以前、筆者の隣人に、5歳にして3カ国語を操っていたF君という子どもがいた。F君のお父さんもマルチリンガルでフランス語とドイツ語を母語とする両親の元で育ち、F君のお母さんはロシア人(ロシア語とドイツ語のバイリンガルで英語を学習中)だ。夫婦間では基本的にロシア語で会話している。F君はお父さんや祖父とはフランス語で会話し、お母さんとはロシア語で会話している。生活の場はドイツ語圏で、F君は友だちや祖母とはドイツ語を使う。小学校から英語の授業があるから、いまごろはきっと4カ国語を使いこなしているに違いない。

子どもがマルチリンガルになる過程を研究しているスイス人の知人(大学教授、彼も当然のようにマルチリンガルで5カ国語ができる)によると、子どもの性格や言葉のセンスにもよるとした上で、幼児は「この人とはこの言葉で話す」と認識するので、子どもに対して1人1言語のルールを守れば3カ国語は問題なく話せるようになるそうだ。

スイスの語学教育だと、3カ国語が普通になる?

2カ国語を使用する子どもも、将来3カ国語以上を操る可能性は高い。スイスのジュネーブはフランス語圏だ。お母さんがジュネーブ出身(母語はフランス語)で、お父さんがチューリヒ出身(母語はドイツ語)の子どもは、生活圏がチューリでもジュネーブでもドイツ語とフランス語で育つ。これに小学校から習う英語が加わる。英語に対してポジティブな印象を持っている子どもが多いから吸収は早い。とくに最近の子どもはユーチューブが身近で英語の動画を見ることも多いため、授業以外でも普段から英語にふれている。

では、両親ともドイツ語が母語で生活圏もチューリヒの子ども(仮にJ君)はどうなるかというと、それでもマルチリンガルになる可能性は十分ある。ドイツ語、英語、そしてフランス語の学習がすでに小学校から必須だからだ。ただ、フランス語の授業が昔ながらの文法中心スタイルでスピーキングがいま一歩とか、フランス語より英語が好きでフランス語は弱いというのはよく聞く話ではある。もしJ君がジュネーブに住んでいたらフランス語の力はチューリヒに住むより強くなり、小学校からフランス語とドイツ語と英語の学習が必須となる。

というわけで、春香さんがドイツ語、英語、フランス語ができるのは環境が整っていたからであり、また3つの言葉の言語的距離が近いためだろう。日本語のレベルがとても高いことはセンスと意欲と継続の結果だと思う。

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