最新記事

ライフスタイル

一人暮らしよりわざわざ他人と暮らしをシェア? イギリスで新しい共同生活が選ばれる理由

2018年10月23日(火)11時03分
冨久岡ナヲ(イギリス在住ジャーナリスト)

共用スペースが充実した物件ばかりだ(写真はイメージです)andresr-iStock

<経済的な理由からのハウスシェアではなくあえて新しいタイプのシェア物件を選ぶ人がイギリスで目立ってきたという>

何人かでマンションや家を借り、キッチンやバスルームを共用する「ハウスシェア」は、日本の都市部でもいまや珍しいことではなくなった。欧米でハウスシェアといえば昔から、大学生や社会人になりたての人たちに利用されてきた住み方だ。

一番の理由はもちろん、家賃を低く抑えられること。長く暮らすことは想定していないので、共用のキッチンの流しに汚れた食器を残して平気な人、朝バスルームを長々と占領する人がいてもなんとか我慢する。収入が上がってきたら早々にシェアをやめて一人専用の物件に引っ越し、さらに持ち家購入を目指すというのがいままでの流れだった。

ところがイギリスでこの状況が変わってきた。収入が上がってもわざわざ共同生活を選ぶという人が目立ってきたのだ。職業はさまざまだが、入居者は20代後半から30代前半のミレニアル世代が圧倒的で年収は現在の為替で400万円〜600万円。建築とデザインのデジタル誌、DeZeenによると、彼らは自分たちの住まい方を従来のハウスシェアではなく「コ・リビング」だと言い、好むのは新しく登場してきた大型のシェア専用物件だ。

たとえば、ロンドンに登場した「コレクティブ」。若い起業家がこんなところに住んでみたいというアイデアを実現した物件だ。とても狭いけれどスタイリッシュな個室は清掃サービス付き。設備の整ったキッチンやランドリーなど共用部分もラグジュアリー仕様で、広々としたリビングルームで仕事する人も多い。

546部屋という大きな建物の中にはジムやスパ、レストラン、シネマルームもある。そして売り物はシェア住民同士が交流できるコミュニティーイベント。専任のプランニングチームがいて、さまざまなイベントやワークショップ、パーティーなどスケジュールは盛りだくさん、毎日何かが起こっている。

やはりこうしたコ・リビングこそ未来の賃貸スタイルという賃貸不動産エージェントが立ち上げた「フィジー・リビング」には、ホテルのようにコンシェルジュが常駐している。

決して安くはないのに選ばれる理由は?

至れり尽くせりなサービス、光熱費やWi-Fi使用料まで込みというこうしたアップマーケットな共生ハウスの家賃は最低でも1カ月1100ポンドから。10月現在の為替で16万円ほどする。ベーシックなハウスシェア家賃の2~3倍だ。同じようなロケーションで1DKのマンションが借りられる額だし、持ち家のローン返済額としても相当な数字だ。それでもなぜこうしたコ・リビングを選ぶのだろうか。

一因は「持ち家志向」の崩壊にあるようだ。イギリス人は伝統的に持ち家にこだわる。以前は働き始めてから10年以内に単身でアパートを購入、結婚してダブルインカムになり子供ができたらより大きな家に買い替えていくのが定番ライフスタイルだった。それが、最近では不動産価格が高騰しすぎてこのルートをあきらめる人が増えている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾包囲の大規模演習 実弾射撃や港湾封鎖訓

ワールド

和平枠組みで15年間の米安全保障を想定、ゼレンスキ

ワールド

トルコでIS戦闘員と銃撃戦、警察官3人死亡 攻撃警

ビジネス

独経済団体、半数が26年の人員削減を予想 経済危機
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    「これからは女王の時代」...ヨーロッパ王室の6人の…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「恐ろしい」...キャサリン妃のウェディングドレスに…

  • 3

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 4

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 5

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:ISSUES 2026

特集:ISSUES 2026

2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン