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一人暮らしよりわざわざ他人と暮らしをシェア? イギリスで新しい共同生活が選ばれる理由

2018年10月23日(火)11時03分
冨久岡ナヲ(イギリス在住ジャーナリスト)

「出会い」も重要なポイントだ。職場と住まいを往復するだけの毎日を過ごしている独身者なら、パートナー候補との出会いの場を渇望するだろう。

ミレニアル世代の多くが、90年代半ばからヒットしたアメリカのシチュエーション・ドラマ『フレンズ』(マンハッタンの大きなアパートをシェア)やイギリスの『ディス・ライフ』(南ロンドンのタウンハウスをシェア)に少なからず影響を受けている。ドラマのように気の合う同世代同士が一つ屋根の下に住み、華やかで楽しい毎日を送る間に友情や愛情が育つ...ということが、こうしたコ・リビングなら実現可能に思えるのだ。

「所有」より「経験」に意義と価値がある

インテリアデザイナーのナオミ・クリーバーは、ミレニアル世代は、家や車などモノを豊富に持つことが幸せだとは思わない人たちであり、「物を『所有』することよりも、より多くの『経験』を積むことに意義や価値を見出している」と語り、コ・リビング物件がそういった機会を生み出す場所だと捉える。 

しかし、掃除、洗濯、料理やゴミ出しなど一人暮らしの社会人が避けられないことを頼めばやってもらえ、エンタメや出会いの場までお膳立てしてくれるこの住環境は、大学の寮生活の豪華版のようだ。コレクティブに体験入居したジャーナリストのエマ・レジャーも、ライフスタイル誌スタイリストの中で「実家暮らしのティーンに戻った気分だった、社会に出ても気分は学生のままでいたい人にはいいかも」と感想を述べている。

そんな声をよそに、人気に乗ってイギリス中の都市にこうしたコ・リビング物件が続々と建設されている。

たとえば北イングラドの都市リーズでも、2年後の完成を目指し23階建ての大型物件の建築が始まった。オフィスを共用する「コ・ワーキング」スペースを提供してきた会社による新プロジェクトだ。子供を持つファミリーでも借りられるタイプも登場し、従来とは違う新しい価値観に基づいたライフスタイルが育ちつつあることは確かなようだ。

とはいえ、年齢を重ねても「所有よりも経験が大事」と言い続けられるのだろうか、これからの発展に興味がつきない。

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