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フランス社会

LGBT最前線を行く、フランスの次なる課題とは?

2018年07月19日(木)16時10分
西川彩奈(フランス在住ジャーナリスト)

LGBTが主体の政治グループ

カトリーヌは、「PMAを例に言うと、マクロン大統領は法律を成立させるのに『いいタイミング』を見計らっているのかもしれないけど、最適なタイミングなんて存在しないと思う。今後は、特にトランスジェンダーの身分証明書の性別の変更が「容易」にできるよう検討してほしい。現在は裁判官に認めてもらわないといけないけど、近い将来は、市役所で無償の簡単な手続きでできるようにしてほしい。そうすることで身体は女性、心は男性として生まれた人たちが、より苦しみから解放される」と、力強い眼差しで話した。

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中道右派のLGBTグループ「Gaylib」のメンバー。取材に答えてくれた代表のカトリーヌ(中右)(Photo:Catherine Michaud)

フランスのLGBTの間では左派が多い一方、2017年の大統領選では、極右国民戦線(現・国民連合)のマリーヌ・ルペン党首をサポートするLGBTも見られた。この日のパレードでは左派グループがチラシを積極的に配布するなど、それぞれの政治思想を掲げてLGBTが自分らしく生きることのできる社会づくりに効果的に働きかけようと活動する人の姿が目立った。

徹底したHIV感染の予防を!

パレードも佳境に入り盛り上がりが最高潮に達した頃、急に音楽が鳴り止んだ。すると参加者たちはおもむろに道に寝そべり、3分間の黙祷を捧げた。これはフランスで1年に1500人が亡くなる、エイズ患者への弔意を表するものだ。

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パレード中、亡くなったエイズ患者に思いを馳せて(Photo:Ameer Alharbi)

エイズ患者の支援団体「Les Actupiennes」に所属し、自身もゲイのロマンが、フランスでHIV感染者・エイズ患者を減らすための課題を語ってくれた。

「最も大切なのは政府が、無償で検査にアクセスしやすくなるように働きかけることです。そして、学校でのHIV感染予防の方法などの啓蒙活動も必須。特にHIV感染を予防するために薬を内服するPrEP(曝露前予防)や、48時間以内に抗HIV薬を内服して感染リスクを低下させるPEP(曝露後予防)などの知識を今後広めていかなければならない」

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エイズの支援活動団体「Les Actupiennes」の代表ロマン(左)(Photo:Ameer Alharbi)

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