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フランス社会

LGBT最前線を行く、フランスの次なる課題とは?

2018年07月19日(木)16時10分
西川彩奈(フランス在住ジャーナリスト)

最近フランスでは、ゲイに対してエイズを連想するという偏見や差別の解消が着実に進んでいる。2016年にはHIVウイルスの発見から33年を経てゲイに献血の権利が認められた。しかし、ゲイに限り献血をする際は性交渉を12カ月間しないといった制約などが残っているのも事実。今後の課題は少なくない。

フランスのLGBTの半数以上が、ホモフォビアによる攻撃を経験

今年6月26日、ゲイ文化の中心地マレ地区でLGBTを脅かす事件が起こった。

4日後に控えたゲイ・プライドのために虹色に塗られていた横断歩道が、真っ白に塗り潰され、「ホモセクシャルはフランスから出ていけ」と中傷する落書きがされていたのだ。

同日、横断歩道はパリ市によって虹色に塗り直され、市長のアンヌ・イダルゴ氏は、この虹色を一時的ではなく「永久」に残し、LGBTをサポートする意思を表明した。

また、調査会社L'Ifopが発表した2018年最新の調査によると、53%のLGBTがホモフォビアによる何らかの攻撃を受けた経験があるという。さらに、24%が性的被害に遭ったと報告されている。たしかに筆者の知人のLGBTたちも、ホモフォビアの攻撃に備えて鞄の中に防犯グッズは必須で携帯している人が多い。

政治家の多くがホモセクシャルであることをカミングアウトし、政府がLGBTの権利に積極的に取り組んでいる。そういったオープンな社会が、LGBT市民に権利を訴え続けるパワーを与えているのではないだろうか。


ayananishikawa-01.jpg[執筆者]
西川彩奈
フランス在住ジャーナリスト。1988年、大阪生まれ。2014年よりフランスを拠点に、欧州社会のレポートやインタビュー記事の執筆活動に携わる。過去には、アラブ首長国連邦とイタリアに在住した経験があり、中東、欧州の各地を旅して現地社会への知見を深めることが趣味。女性のキャリアなどについて、女性誌『コスモポリタン』などに寄稿。パリ政治学院の生徒が運営する難民支援グループに所属し、ヨーロッパの難民問題に関する取材プロジェクトなども行う。日仏プレス協会(Association de Presse France-Japon)のメンバー。
Ayana.nishikawa@gmail.com

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