樹木は語り合っていた...皆既日食で明らかになった「老木の知恵」とは？【最新研究】

老木は「覚えている」

日食が始まる前から、エントロピーや複雑性の変化といった内部活動の指標が観測されるなど、年老いた木は最も早い段階から反応を示した。

この現象は「森全体の同期性」、つまり木々は孤立した個体ではなく、統合された「コミュニティ」として機能していることが示唆される。

また、光や気温の変化はほとんど見られなかったことから、太陽・月・地球の整列による重力的な手がかりをもとに、木々が事前に「感知」していた可能性があると研究チームは指摘する。

量子生物学の可能性...森は「絡み合っている」

研究チームのアレッサンドロ・キオレリオ博士は、木々のつながりは生物学的なものにとどまらず、物理的にもエネルギー的にも深く結びついているとして、本誌の取材に対して次のように述べる。

「私たちの研究は量子力学と生物学の架け橋になるものです。森林は量子場の相互作用という観点からも理解可能です」

研究の理論的枠組みは「場の量子論（quantum field theory ：QFT)」に基づき、木々が互いに物理的なやりとりを行わずとも、生体電気信号を位相同期させている可能性を示している。つまり、空気や土壌を介することなく、「絡み合う」ような形でつながっているということだ。