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「どうしても和食が足りない」...機内食が足りないとき、CAはどう動くか――ANAレジェンドが語るサービスの真髄

2026年2月16日(月)14時31分
大宅 邦子 (元全日本空輸 国際線客室乗務員*PRESIDENT Onlineからの転載)

クレームは相手に信用された証

問題はお連れ様同士が一緒に食事できなかったことで、CAが気がついて2人分を同じ側から渡せば、何事もなく召し上がっていただけたでしょう。

そこでまず、「気遣いが足りずにご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」とお詫びし、「今後こういったことのないよう、ご指摘を反省会で取り上げて検討します」とお約束しました。「改善のためのよいご意見をいただき、ありがとうございます」とお礼も申し上げました。


クレームはただ謝ればいいというものではありませんし、ご要望をすべて受け入れられるわけではありません。できることと、できないこと。お詫びすべきこと、ご理解いただくこと。一つひとつを交通整理したうえで、納得していただくしかありません。

クレームはまた、チャンスでもあります。本当に腹を立てたり、がっかりしたお客様は、「言っても無駄だ」と、黙って去っていくものです。もしも意見を言うとしたら、ネットの書き込みだったりします。

直接クレームを言ってくださるとは、「この人なら話は通じるはずだ」と信用してくださった印です。ちゃんとお詫びをし、交通整理をしながら話し合えば、またご搭乗くださいます。つまり、関係を深めるチャンスになるのです。現に食事サービスのタイミングがずれたお客様は、最終的には納得し、マイレージ会員の申し込みまでしてくださいました。

マニュアルを超えた「ANAマジック」

「クレームは嫌なものかもしれませんが、恐れることはありません」

私が後輩にこう伝えてきたのは、それがチャンスだと経験しているからです。

仕事先、家族、友人知人。日々にちょっとした行き違いはつきものです。

ごまかしたり、口先だけで謝ったり、逃げたりしない。そうすれば、相手としっかりかかわるきっかけにできるように感じます。

幼稚園くらいの小さなお客様には、退屈しのぎのおもちゃを。

若い男性のグループには、みんなで気分転換ができるトランプを。

こうしたプラスアルファのサービスは、もともと自発的にCAがやっていたものです。会社はその姿勢を評価し、マニュアルを超えたお客様へのサービスを「ANAマジック」と名づけて応援しています。

今では新婚旅行や記念日、誕生日のサービスができるよう、お皿にメッセージが書けるチョコレート・チューブを常備しています。ケーキとフルーツに、「HappyBirthday」のメッセージを添えた一皿は、おかげさまでご好評をいただいているようです。CA側にとってもうれしいことで、続けてほしいと思いますが、忘れてほしくないのは、それはサービスの中の「花」だということ。

私は後輩CAたちに、機会があるとこう伝えていました。

「バースデープレートはすてきです。でも、それだけに走らないようにしてくださいね」

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