最新記事

マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実

2025年12月28日(日)11時10分
早川幸子 (フリーライター*DIAMOND Onlineからの転載 )

以前は、おくすり手帳を持参した患者の医療費が高くなったり、おくすり手帳にかかる料金が薬局の規模によっては異なっていたりして、おくすり手帳を持参することにメリットを見いだせないような調剤報酬体系がとられていた時期もあった。

だが、現在は、患者にとって不条理な仕組みは見直され、薬局の規模にかかわらず、同じ薬局を3カ月以内に利用した場合は、おくすり手帳を持参した方が患者の自己負担分は安くなるように見直されている。

初めて行った薬局や、同じ薬局を3カ月を超えて利用した場合は、服薬管理指導料は安くはならないが、おくすり手帳を持っていっても医療費が高くなるわけではない。何よりも、おくすり手帳があったほうが、万一の健康被害を防ぐことができる。


内閣府の世論調査「薬局の利用に関する世論調査」(2020年10月調査)によると、71.1%の人がおくすり手帳を「利用している」と答えている。

おくすり手帳の利用は定着してきており、70歳以上の人は84.6%が利用している。ただし、18~29歳の人は59.2%、30~39歳の人は59.8%で、若い世代の利用率は6割程度にとどまっている。

「おくすり手帳」は1冊に情報をまとめよう旅先で病気やケガをした時の助けにも

薬は正しく飲めば、病気やケガの回復を助けてくれるが、用量や用法を間違えると、思わぬ健康被害を招くことがある。

前述のように、おくすり手帳は、重複投与や相互作用による健康被害を防ぐためにつくられたもので、効果的に使うためには複数の医療機関から処方された薬の情報をまとめて記録しておくことが大切だ。

そのため、おくすり手帳は何冊も持たずに、1冊だけにして、全ての情報をまとめるようにしておこう。処方薬だけではなく、ふだん飲んでいる市販薬やサプリメントの情報なども書き込んでおくと、薬剤師から服薬に関するアドバイスを受けることもできる。

また、旅先で病気やケガをしたり、緊急搬送されたりした時も、おくすり手帳を携帯していると、ふだん服用している薬が分かり、安全で効果的な治療を受けやすくなる。

公的医療保険の資格情報の方法は、マイナ保険証や資格確認書に見直されたが、どんな薬局に行く時も、おくすり手帳は変わらずに持っていくようにしたい。

※当記事は「DIAMOND online」からの転載記事です。元記事はこちら
newsweekjp20241210070726-0536f5d9a0b841fadc7a37a3ae2182051cf62ee9.jpg

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中