最新記事

インド

時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振

2022年9月5日(月)12時20分

先月はクマールさんのラクシャバンダンだけでなく、別のボリウッド大物俳優アーミル・カーンさんが主演した「ラール・シン・チャッダー」も「大コケ」し、まさにボリウッドのたそがれが鮮明になっている。ラール・シン・チャッダーは、米ハリウッドの人気映画「フォレストガンプ」のリメーク版で、祝祭の連休入り前日だった8月11日に公開されたにもかかわらず、興行収入は5億6000万ルピーと投入予算の4分の1程度に過ぎなかった。

INOXのジアラ氏は、あまりの不振ぶりに運営するシネコンでラール・シン・チャッダーの上映回数を25%減らしたと述べた。

今後公開予定で巨額予算を投じた映画2本を抱えるボリウッドのある有力プロデューサーはロイターに、各プロデューサーは新しい映画の製作に当たり、予算から脚本、出演者まで何もかも再調整していると語り、視聴者の求めるものに寄り添っていかなければならないと強調しつつも、「その正解はもう持ち合わせていない」と不安を打ち明けた。

負担感大きい映画料金

インドは他のほとんどの国・地域と同じく、人々が生活費高騰と苦闘している。それだけに映画ファンや業界関係者は、映画館で鑑賞するのに結構なお金がかかるというのも重大な問題だと指摘する。

大スクリーンを持つ映画館に4人家族で行けば、通常は3000─5000ルピー(35─60ドル)の出費。多くの国民が貧困にあえぎ、平均年収が約16万ルピーにとどまるインドでは高額だ。対照的にネットフリックスなどの動画配信サービスの月額はおよそ150ルピーでしかない。

映画プロダクションと配給会社を所有し、ボリウッド女優と結婚しているアニル・タダニ氏は「どこかで調整が必要になる。予算を組み直し、映画館に行く費用を下げなければならない。ヒンドゥー語映画産業は一般大衆からかい離しつつある。国民の大部分はこれらの映画と一体感を持たなくなっている」と危機感をあらわにした。

スンダレサンさんもタダニ氏と同じ感覚を持っている。「映画館に行ってずっと座りっぱなしで、自分のペースで鑑賞できないというのは時間の浪費に思われる。OTTで視聴した方がメリットは多い」と話す。

(Shilpa Jamkhandikar記者、Krishna N. Das記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏のミサイル防衛システムへの関与で調査要請=

ビジネス

丸紅、自社株買いを拡大 上限700億円・期間は26

ワールド

ウクライナ協議の早期進展必要、当事国の立場まだ遠い

ワールド

中国が通商交渉望んでいる、近いうちに協議=米国務長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中