ガーナのカカオ農家に誇りを 田口愛(23)を突き動かす衝撃の体験【世界に貢献する日本人】
「ガーナで事業を広げたい」と話す田口(アマンフロム村で) COURTESY AI TAGUCHI
<大学1年生のとき、ガーナを訪れた。そこで手作りチョコを振る舞って......。エンプレーソCEO、田口はただのチョコ好きではない>
今年1月のLINEリサーチによる調査で、チョコレートが「とても好き」「やや好き」と答えた人は計86%。スーパーやコンビニに並ぶチョコレートからショコラティエの手掛ける高級品まで、日本人はチョコレートが大好きだ。
Mpraeso(エンプレーソ)CEOの田口愛(23)も間違いなくその1人。ただ多くの人と違うのは、小学生の頃から「チョコの先にいるのはどんな人たち?」と気にしていたこと。そして、日本に輸入されるカカオ豆(チョコの主原料)の8割がガーナ産であることや児童労働の問題を知るようになり、「現地の様子を見たい」と思ったことだろう。
念願かなってガーナを初訪問したのは、大学1年生だった2018年6月。ある団体の紹介でカカオがよく取れるイースタン州アマンフロム村に行き、現地の人の元に6週間滞在した。
だが「チョコレートが好きでここに来た」と村人に話したところ、「この村には売っていないし、そもそも食費3日分くらいの高価なものだ」と言われた。現地のカカオ生産者にとって、チョコレートは遠い世界のものだった。
そこで田口はカカオ豆とサトウキビ、ヤギの乳でチョコを手作りし、みんなに振る舞った。
「自分で育てたカカオから作られたチョコを初めて食べた70歳くらいの女性に『人生で食べたものの中で一番おいしい』と言われた。カカオ農家の人からそれを聞く衝撃と、チョコを気に入ってくれたうれしさと。そのときの気持ちは今も原動力になっている」
アマンフロムのカカオを使ったチョコを生産・販売するため、日本でMpraesoを立ち上げたのが昨年6月。その後、本格的な工場を現地に建設する資金をクラウドファンディングで調達した。
初日に目標額100万円を達成し、最終的に約427万円を集めたが、予想外の反響に戸惑いもあった。
「(ファンディングのリターンの)チョコを大量生産することになり、作り方や包装に悩んだ。お客様から厳しい声も頂いた」
いい経験になったが、「あのときは1日に21時間くらいチョコを作っていた」と田口は笑う。