最新記事

株の基礎知識

石油関連の銘柄はPBR1倍以下でなぜか「割安」、だが今後は......

2019年10月21日(月)16時40分
星野涼太 ※株の窓口より転載

alex-mit-iStock.

<企業のビジョンは投資の判断材料になるか? 実はビジョンは、長期的な期待だけでなく、目先の株価に大きく関係することもある。日本の石油関連銘柄から見えてくるその理由とは>

石油関連は本当に「割安」なのか?

日本の株式相場で「石油関連銘柄」といえば、鉱業業種の国際石油開発帝石<1605>、石油資源開発<1662>、石油・石炭業種のJXTGホールディングス<5020>、出光興産<5019>、コスモエネルギーホールディングス<5021>などが主に挙げられる。

2019年9月末の時点で、これら石油関連にはPBR(株価純資産倍率=時価総額÷純資産)が1倍を下回っている銘柄が多く、ここに挙げた代表的な銘柄も全てPBRは1倍に達していない。

これによって、石油関連はしばしば「割安」と見られ、買われるケースがある。しかし、今後はそんな買い余地もなくなるかもしれない。

■世界の資源大手が続々と「脱炭素化」

8月、こんなニュースが経済メディアを賑わせた。


「イギリス、オーストラリアの資源大手・BHPグループが石炭事業売却の検討を始めた」
「イギリス、オランダの資源大手であるロイヤル・ダッチ・シェルが機関投資家からの評価を意識し、脱炭素化をより加速した」

BHPは世界最大の鉱業企業、ロイヤル・ダッチ・シェルは石油メジャーの一角とあって、両社の脱炭素推進ニュースは世界の投資家に小さくない心理的インパクトを与えた。

脱炭素化の背景に「ESG」あり

二酸化炭素(CO2)の排出を抑制しようとする動きは、いまや世界中のあらゆる場面で議論されるトピックであり、投資の世界では「ESG投資」という考え方と併せて語られることが多い。

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)、それぞれの頭文字を合わせた単語。そしてESG投資とは、投資先を選ぶうえでこれら3要素に関する企業の取り組み姿勢も評価に加えようというものだ。

■投資家が地球環境に配慮すべき理由

これら3要素のうちのE(環境)の軸において、「CO2の大量排出につながる化石燃料を扱う企業には投資しない」という動きが、海外の機関投資家を中心に広がっている。

この脱炭素投資スタイルには、地球環境への配慮に運用方針をフィットさせるという倫理的側面がもちろんあるが、化石燃料需要の縮小に伴う関連資産の価値低下と、それがもたらす減損損失や株価下落を回避しようという経済的側面もある。

こうした側面を背景に、投資の世界では単なるCSR(企業の社会的責任)目的にとどまらず、投資リターン拡大の手段としてESG投資が本格的に導入されてきているのだ。

化石燃料の需要縮小、機関投資家からの投資手控え、そしてグローバル大手の撤退が並列して進む中、冒頭に挙げた国内の石油関連大手は、今後どのような方針を示すのだろうか。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ政権、大使ら約30人召還 「米国第一」徹底

ワールド

ウクライナ巡る米ロ協議、「画期的ではない」=ロシア

ビジネス

アルファベット、クリーンエネ企業買収 AI推進で電

ワールド

EXCLUSIVE-中国、100基超のICBM配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中