最新記事

キャリア

中途採用者の能力をすばやく発揮させる手法「オンボーディング」とは何か

2019年5月17日(金)16時30分
徳谷 智史 : エッグフォワード 代表取締役 *東洋経済オンラインからの転載

さて、ここまではどちらかといえば、新しく人が現場配属された後の活動に力点を置いて説明をしてきた。しかし、オンボーディングは最初にご説明した通り、導入研修だけのことでもなければ、現場のOJT(On the Job Training)を意味する言葉でもない。ある一定期間に行う"点"の活動というよりは、長期的かつ人事部門と配属先、場合によっては会社全体でタッグを組む"面"の活動だ。

つまり、新しい人材の戦力化に悩む企業の多くは、採用・育成・実務......とそれぞれがバラバラの活動(点の活動)をしており、連携(面の活動)が取れておらず、そのことに気づいていないことがほとんどである。

まず、入社後の戦力化以前に現場の求める人材が採用できていないケース。現場は採用を担う人事の責任にしがちだが、そもそも現場が人材要件を人事に正しく共有できていないことが要因であることも多い。いわゆる採用のミスマッチだ。

現場に育成を丸投げするのはNG

また、人事が現場に育成を丸投げしているケースもよく見かける。実務からの学びを重視することは悪いことではないが、とくにメンターとの相性で立ち上がりに大きくばらつきが出てしまうことがわかっている。

これは、科学的な分析手法を取り入れ、メンターとのコミュニケーションスタイルを合わせることで一定の品質を保つことができる。弊社でもチームメンバーの相性や、強み・弱みを科学的に分析し、適切なコミュニケーションを取ることで人材の効果的な育成をする取り組みを提唱している。

「着実にやっていこう」と寄り添うことで伸びる人もいれば、「お前ならもっとやれる」と言われることで奮い立つ人もいるだろう。自分の育成スタイルがつねに相手にとって最適であるとは限らないと理解し、早いうちに個人の特性を把握することをおすすめする。相手の学習スタイルに添った効果的な育成を施すことで、最短でメンバーの資質を開花させることが可能となる。

意外に盲点なのが、オンボーディングの活動を検証し改善していくようなチェック機能がないことである。人事と配属先の連携が取れていないと、新メンバーのコンディション変化を多角的に捉えることができず、突然の離職を招きやすい。離職の原因もはっきりしないので、改善策の打ちようもなくなってしまう。

こうしたことを防ぐためにも、オンボーディングは現場の上司・先輩だけの役割としないほうが賢明だろう。人事が適宜介入することも必要だし、社員の率直な声を吸い上げるために弊社のような外部の第三者を活用するのも良い。

他部署の先輩(直接の利害関係がない先輩)がメンターにつくという方法を取る会社も急増している。これは新しく入ったメンバーの生のフィードバックを収集し、必要であればすぐに方向修正をすることで、組織としてハイパフォーマンスであるための施策へと昇華させるためだ。

このように、オンボーディングは本質的には入社前の時点ですでにはじまっており、入社後も、3カ月や半年といった短い期間で終了するものではない。1年後や3年後にはどれくらいのレベルになってもらうかを設定し、それに向けて一人ひとり適切な支援をしていく。

このような取り組みを真摯に行なっている企業は、採用するあらゆる人を戦力として立ち上がらせることが、最終的には強い組織への近道であることを知っているのだ。

昨今の変化の激しい市場を生き残る秘訣の1つがオンボーディングであると肝に銘じて、新しいメンバーの立ち上がりを支援していただきたいと思う。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

2月景気動向一致指数、前月比1.6ポイント低下=内

ビジネス

ネットフリックス、ゲーム事業を強化 子ども向け新ア

ワールド

アルテミス2が人類最遠到達、40.6万キロ 月の裏

ワールド

EUの超過利潤税案、再生エネ投資抑制の可能性=スペ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 6
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 9
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 10
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中