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「中国の接触、米国の標的を避けたい」海運業界で「香港離れ」が静かに進んでいる理由

2025年3月9日(日)18時37分

過去10年間、中国の政府や軍の文書および研究は中国の商船が持つ民政・軍事両用の「デュアルユース(二重用途)」の価値を強調してきた。2015年に制定された規則では、タンカー、コンテナ船、ばら積み貨物船を含む5種類の商船について軍事用途に適応できるよう設計することが義務付けられたと国営メディアが報じている。その後、国有企業の中国遠洋海運集団(COSCO)の事業は大幅に拡大。同社の公開文書によると、中国政府は政治将校を商船に配置している。米国は今年1月、中国軍と関連があるとしてCOSCO子会社をブラックリストに追加した。

<真のリスク軽減>

地政学的な課題にもかかわらず香港は依然として船主にとって重要な拠点であり続けているが、それでも一部の企業は密かにリスクヘッジを進めている。

2014年に香港で設立され、現在はロンドン市場に上場しているテイラー・マリタイムは近年、香港での事業を縮小している。21年以降、船籍登録をマーシャル諸島とシンガポールに移し、事業拠点をロンドン、ガーンジー、シンガポール、香港、ダーバンに分散させた。事情に詳しい関係者は「テイラー・マリタイムは香港で真のリスク軽減を図った」と話した。

香港上場のパシフィック・ベイスン・シッピングは、以前は110隻のばら積み貨物船を香港に登録していたが、潜在的なリスクを見極めつつ、船籍の登録変更を視野に入れた緊急対応計画を策定中だと関係者2名が明かした。

香港船主協会のアンガド・バンガ会長は、複雑な地政学的環境の中で海運企業はリスク評価に基づいて緊急時対応計画を調整しているが、船舶の徴用についての懸念は聞いたことがないと述べた。

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