最新記事

事件

終焉の始まりか 仮想通貨「寵児」と呼ばれたFTX創業者、転落の軌跡 

2022年12月14日(水)11時21分

バンクマンフリード氏はビジネス上手で交渉にたけていると見られていたため、FTXの破綻は市場にとって不意打ちだった。

同氏はカリフォルニア育ちで、両親はともにスタンフォード大学法学教授のジョゼフ・バンクマン氏とバーバラ・フリード氏。最初に働いたのはジェーン・ストリート・キャピタルで、この道を選んだのは「効果的利他主義」への関心を追求するために資金を稼ぎたかったからだと述べている。効果的利他主義は、慈善団体への寄付を優先するよう人々に促す考え方だ。

億万長者から破綻へ

バンクマンフリード氏は、アジアと米国における仮想通貨ビットコインの価格差を利用して財を成し、1年前のフォーブス誌の推計では資産が265億ドルに達していた。2017年に仮想通貨取引企業アラメダ・リサーチを創業し、その1年後にFTXを興した。

FTXとバンクマンフリード氏の両親、FTX上級幹部らは過去2年間に少なくとも合計19件、総額約1億2100万ドル相当の不動産を、FTXが籍を置くバハマで購入していることがロイターの報道で明らかになっている。

FTXが破綻申請をして以来、バンクマンフリード氏はメディアインタビューや議会で見せてきた自己イメージから距離を取っている。Voxの記者に対しては、仮想通貨に規制の枠組みを導入すべきだと主張してきたのは「単なるピーアール」だと述べ、業界の倫理についての発言も、少なくとも一部は演技だったと認めた。

FTXが破綻する数日前、トレーダーが資金の引き揚げに殺到した際、バンクマンフリード氏は投資家に対し、FTXは救済されると確信していると述べた。事情に詳しい人物が明らかにした。

FTXの破綻を受けてビットコイン価格は2年ぶりの安値に急落し、投資家はこの問題が他の仮想通貨企業に広がるのを恐れている。FTXの従業員も虚を突かれた格好で、一部の顧客に謝罪する文書を送ってショックを伝えたと、関係者は話している。バンクマンフリード氏自身、何度か顧客と従業員に謝罪した。

バンクマンフリード氏は過去に、常にFTXの将来に自信を抱いたわけではないことを吐露している。

6月の会合で同氏は「誰も使ってくれないから、わが社は破綻するだろうと考えたことがあった」と述べた。この数週間後、FTXとアラメダは窮状にあった2つの仮想通貨プラットフォームに救いの手を差し伸べた。

(Hannah Lang記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ネタニヤフ氏、イラン核問題巡りトランプ氏と協議へ 

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ワールド

ロ、米のカリブ海での行動に懸念表明 ベネズエラ外相

ワールド

ベネズエラ原油輸出減速か、米のタンカー拿捕受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中