最新記事

金融

ビットコイン法定通貨にしたエルサルバドル、国内の貧富格差映し出す

2021年10月4日(月)11時57分
サンサルバドルでビットコインの法定通貨化に反対するデモに参加した男性

エルサルバドルの首都・サンサルバドル。ベルティラ・ガルシアさん(65)は40年も前からこの街の一角に露店を構え、菓子を売ってきた。写真はサンサルバドルでブケレ大統領やビットコインの法定通貨化に反対するデモに参加する男性(2021年 ロイター/Jose Cabezas)

エルサルバドルの首都・サンサルバドル。ベルティラ・ガルシアさん(65)は40年も前からこの街の一角に露店を構え、菓子を売ってきた。国は9月、暗号資産(仮想通貨)ビットコインを法定通貨にしたが、ガルシアさんは現金以外で代金を受け取ったことはないし、今後もそのつもりは一切ない。

エルサルバドルの動きは、世界初の画期的な政策対応だった。だが、多くの一般市民は自分の生活にどう降りかかってくるのか、理解しあぐねている。

「さっぱり分からない」と語るガルシアさん。9月7日に新法が施行されて以来、客からビットコインで支払いたいと言われたことはないという。

スマートフォンを持っていないガルシアさんは、政府が導入した電子財布「CHIVO(チボ)」をダウンロードすることが、そもそもできない。

先端技術に通じたブケレ大統領(40)は20日にツイートで、これまでに約640万人の国民の4分の1がチボを使い始めたことを明らかにした。

ブケレ氏は、ビットコインの法定通貨化によって国民は送金手数料を年間約4億ドル節約できると説明する。しかし、専門家はデータ保護やビットコイン相場の急変動などの点に懸念があると指摘。特に高齢者が、置き去りにされる恐れがあると分析している。

太平洋に面した海岸沿いの地域では、約3年前から観光客のほか、レストランやホテルの若いオーナーがビットコインを使っている。サーフィンの街、エル・ゾンテは「ビットコイン・ビーチ」として知られ、「ビットコイン受け付けます」のデジタル表示が見られる。

その他の地域でも、政府が設置したビットコイン自動支払い機の前に長い列ができている所がある。ただ、中には、チボに登録した人に給付される30ドル相当のビットコインを現金化するためだけに並ぶ人々もいるようだ。

実験台

ブケレ大統領は、ビットコインの採用によって米ドルへの依存が減り、銀行口座を持っていない人々も金融サービスにアクセスしやすくなって、経済の発展につながると訴えてきた。

だが、高齢者や農村部市民の間で、チボを普及させるのは難しいかもしれない。農村部は自動支払い機やインターネットアクセスが少ない上、現金文化が根付いている。

世界銀行によると、エルサルバドル国民の半分はインターネットにつながっていない。

最貧困層やスマホを持たない人々、デジタルに疎い人々が、ビットコインに飛びつくのも難しい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米イラン核協議、6日にオマーンで開催へ=報道

ビジネス

ファイザーの減量薬データ、副作用に疑問の声 株価下

ワールド

原油先物上昇、米・イランの緊張激化を警戒

ビジネス

中国サービス部門民間PMI、1月は小幅改善 雇用が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 10
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中