最新記事

香港

没落する香港 北部が隣接する中国・深圳の「裏庭化」

2021年4月30日(金)19時12分

中国の不動産開発業者が今、本土とつながる香港の北部地域に目を付けている。写真は2019年10月、深センから香港を臨む(2021年 ロイター/Tyrone Siu)

中国の不動産開発業者が今、本土とつながる香港の北部地域に目を付けている。隣接する深圳の住民から、安価な住宅の供給源と見なされるようになったからだ。かつて世界的な金融ハブだった香港が、かつてへき地だった深圳の「裏庭」と化す転機を迎えたとの見方もある。

香港の不動産市場は活況を保っているが、2019年の民主化要求デモや昨年の国家安全維持法導入で国際的な地位が圧力にさらされている。

対照的に深圳は成長が続く。昨年10月には習近平国家主席が同地を訪れて「モデル都市」と称賛し、外国投資の誘致計画を表明した。わずか数十年前には活気の乏しい場所だったが、今や約1300万人が暮らすハイテク産業の拠点に変貌。かたや養魚池や農地が点在する香港北部には、本土から毎年数十万人が流入している。

深圳はハイテク大手テンセント(騰訊控股)が拠点を置く南山など主要区で、住宅価格が既に香港北部を上回る例が出ている。香港北部は不動産価格の高い中心部から1時間余りの距離。

中国の不動産開発業者の幹部は「深圳が中心になり、香港は周縁になるというのが長期的な見通しだ」と話した。この業者は、以前は人気のなかった香港北部で土地を取得した。「深圳で働いている市民は、住宅価格が割安になる香港から通勤することを選ぶようになるかもしれない」と言う。

香港地政総署のデータによると、2019年以来、北部で6カ所の住宅地が入札に掛けられ、このうち3カ所を中国の不動産開発業者が落札した。

このほかに昨年、中国の不動産大手の中国恒大集団が香港の同業大手、ヘンダーソン・ランドから、深圳に隣接した香港北部の土地25万平方フィートを6億ドルで取得した。

複数の不動産業者によると、中国恒大は香港北部に200戸の開発を計画しており、本土の顧客が主な買い手になると見込んでいる。中国恒大と関連のある不動産業者によると、1平方フィート当たりの取得価格は1万香港ドルで、販売価格は2万香港ドルを見込んでいる。

ひとたび深圳側に入れば、土地の価格は1平方フィート当たり3万香港ドルに迫る。

中国恒大は2018年にも、南山から車で15分の距離にあり、ビーチに近い香港・屯門の土地をヘンダーソン・ランドから8億3300万ドルで取得し、現在アパート2000戸を販売中だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク、「ウゴービ」の試験で体重減少効果

ビジネス

豪カンタス航空、7月下旬から上海便運休 需要低迷で

ワールド

仏大統領、国内大手銀の他国売却容認、欧州の銀行セク

ワールド

米国務長官がキーウ訪問、ウクライナとの連帯示す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中