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いまだ石炭重用する日本、「7つの業界」がエネルギー政策に大きく関与 英団体が調査

2020年8月7日(金)10時50分

英国の非営利組織インフルエンスマップはこのほど、国内総生産(GDP)の1割に満たないごく一部の業界が、日本の気候変動・エネルギー政策に大きな影響を与えているとする調査をまとめた。写真は川崎市内で2011年撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

英国の非営利組織インフルエンスマップはこのほど、国内総生産(GDP)の1割に満たないごく一部の業界が、日本の気候変動・エネルギー政策に大きな影響を与えているとする調査をまとめた。

日本の50の主要な経済・業界団体を選出して検証したもので、気候変動・エネルギー政策への関与の度合いをそれぞれ点数化した。

ロイターが事前に入手した調査報告書は、鉄鋼、電力、自動車、セメント、電気機器、 石油・石油化学、石炭関連の7つの産業が業界団体を通じて積極的に国の政策に働きかけていると指摘。「パリ協定と整合する気候変動政策に反対の立場をとっていることが示された」としている。

一方、金融や小売り、電子機器などの業界は「パリ協定と整合する政策に前向き」だが、政策立案への働きかけが「弱い」としている。

報告書は、後ろ向きな7つの産業が日本最大の経済団体である経団連の中で、いかに大きな影響力を持っているかを詳述。その上で、日本のエネルギー政策の決定に経団連が重要な役割を果たしていると説明する。

「日本の経済界のいわばトップ機関として、経済産業省や内閣府などの主要行政機関との交渉役となり、気候変動政策への働きかけを行うという手法が取り入れられてから、かれこれ20年になる」と、報告書は指摘する。

日本は2021年にエネルギー基本計画を改定する。インフルエンスマップは、こうした業界団体のロビー活動が大きな影響を持つとしている。

経団連の広報はロイターの取材に対し、報告書自体にコメントする立場にないと回答。「政府が掲げたゴールはパリ協定の目標と整合的であり、経団連としてパリ協定が目指す脱炭素社会の実現に取り組んでいく」とした。

脱・炭素社会に向けた取り組みを推進する企業団体、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)の石田建一共同議長(積水ハウス常務執行役員)は、報告書に目を通した上で、「一部の限られた業界が日本の政策に大きな影響力を持ち、脱炭素化を遅らせていることを指摘しており、JCLPで活動する中で感じる実態と一致する」と語った。

JCLPにはイオンや富士通、リコー など大手を始め、約140社が加盟。6月には新型コロナウイルス後の経済回復策について提言を出し、脱・炭素社会への転換を加速するよう政府に求めた。

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