最新記事

米中関係

トランプの「中国敵視政策」は非生産的 アジア外交の専門家ら公開書簡で

2019年7月1日(月)09時57分

米国の元外交・軍事当局者を含む約80人のアジア専門家は、「中国を敵扱い」するトランプ米政権の政策は米国益を損ね、世界経済にも悪影響を与えるとして再考を求めている。写真は大阪で会見するトランプ米大統領(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

米国の元外交・軍事当局者を含む約80人のアジア専門家は、「中国を敵扱い」するトランプ米政権の政策は米国益を損ね、世界経済にも悪影響を与えるとして再考を求めている。ロイターが6月29日に確認した公開書簡の草案で明らかになった。

米中間では貿易戦争が繰り広げられているほか、米国が中国による大規模な情報収集活動を批判し、中国が進める軍の近代化が太平洋西側における米軍のプレゼンスを脅かすといった問題もある。

トランプ大統領と中国の習近平国家主席は29日の会談で、5月以降停止していた通商協議を再開することで合意した。米国は第4弾の対中追加関税の発動をとりあえず控えることも決定した。

アジア専門家約80人が署名したトランプ氏と米議会に宛てられた公開書簡の草案は「われわれは中国政府の最近の行動について深く懸念している一方で、米国の行動の多くは関係悪化を助長していると考える」と指摘。

「中国を敵扱いし、世界経済から隔離させようとする米国の取り組みは米国の国際的な役割と名声を傷つけることになり、全ての諸国の経済的利益を損ねることになる」と訴えた。「世界のリーダーとしての米国が中国に取って代わられるという米国の懸念は誇張されている」とした。

公開書簡の最終版がいつ公表されるのかは不明。

書簡は中国政府による一段の国内統制や民間企業への監督拡大、通商合意違反、海外の世論に影響を及ぼす取り組みの加速、一段と強硬な外交政策は「中国以外の世界にとって深刻な問題」とした上で、中国を実存する国家安全保障上の脅威と見なす現在の米国の対応は、「西側諸国に対する協調的アプローチが中国の国益に資する」と認識している中国政府内の穏健派の影響を弱めることになるため、非生産的だと指摘。

また、米国の同盟国は中国を「経済的・政治的な敵」として扱うことに消極的であるため、米国が孤立する可能性があるとした。

公開書簡に署名したのはスーザン・ソーントン元米国務次官補代行(東アジア・太平洋担当)と元駐中国米国大使のステープルトン・ロイ氏など。

[北京/ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止

ワールド

オラクル会長、404億ドルの保証提供 パラマウント

ワールド

カナダ新駐米大使に元ブラックロック幹部、トランプ関

ワールド

米大統領、史上最大「トランプ級」新型戦艦建造を発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中