最新記事

シリコンバレー

ユニコーン企業はVCバブル崩壊後に栄える

スタートアップをダメにする投資マネーが去った後こそ本領発揮のチャンス

2015年12月7日(月)15時52分
ケビン・メイニー

今が成長期 偉大なIT企業の多くは熱狂が去った後に生まれている Yuri_Arcurs-iStockphoto

「ユニコーン」企業(株式未公開で評価額10億ドル以上のテクノロジー企業)をめぐる熱狂は、ビッグフットや宇宙人探し並みのでたらめだったことが明らかになりつつある。

 テクノロジー・ベンチャーにとって、これは悲報ではない。むしろ望ましい。はるかに、望ましい。

 今この瞬間、シリコンバレーでは多くの人間がパニックに陥っている。過去1年間続いてきたパーティーに、突然の終わりが訪れたかのようだ。

 最近の投資マネー流入のおかげで、株式未公開のスタートアップ企業の価値は高騰し、業界で言うところのユニコーンが急増した。調査会社のCBインサイツによると、今年4月には57のユニコーンがあり、全体の評価額は2110億ドルだった。それが今は144社、5050億ドルに急増た。そのなかには配車サービスのウーバー(評価額510億ドル)や音楽ストリーミングのスポティファイ(85億ドル)のような知られた企業から、ウェブバン、Kabam、Farfetch(各10億ドル)といった無名の企業までいろいろある。

 テクノロジー業界の人間に聞くとほとんどが、バブル的な資金は既に引き揚げたと言う。IPO(新規株式公開)を予定していたスタートアップは、このままでは公開価格割れになることに気づかされた。

 モバイル決済のスクエアの今月のIPOは、ユニコーンたちの将来を占うものとして注目された。スクエアの公開価格は60億ドルだったが、公開後の初値は40億ドル程度になり、ざっと20億ドルが消失した。

ずさんな経営や自信過剰のもと

 間近に見ると問題はさらに深刻そうだ。未公開株に殺到する投資マネーは、ずさんな経営や自信過剰、バカげた期待の原因になった。今後は間違いく解雇が増えるだろうし、未公開株でひと儲けしようとした投資家は故郷に帰るだろう。

 だが、企業価値バブル崩壊の影響は、2000年のITバブル崩壊と比べればはるかに小さい。そもそも、ユニコーンの企業価値は全体でもマイクロソフト一社の時価総額4320億ドルをわずかに上回る程度。ユニコーンはイメージだけが膨らんだ小企業の集まりなのだ。

 1990年代には、インターネットをめぐる熱狂が、非現実的で需要もない事業計画を吹聴する多くのドットコム企業を生み出した。ウェブバンやペット・ドットコムが典型だ。これらの会社に実体はなかった。投資マネーが減り出すと、多くは倒産した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中