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アメリカ経済

バーナンキは史上最もクリエーティブなFRB議長

2012年3月27日(火)13時03分
マイケル・トマスキー(米国版特別特派員)

 こうした措置の規模と効果については、あまり知られていない。しかし数字は雄弁だ。いまだ評価の分かれるバラク・オバマ大統領の景気刺激法案は8000億ドル規模だった。一方でFRBは景気刺激のために市場に約2兆ドルを注入した。しかもその間にもきっちり利益を上げ、昨年は国庫に770億ドルを納入している(金融危機以前は年間300億ドル前後の水準で推移していた)。

 FRBウオッチャーがバーナンキを高く買う理由はほかにもある。例えば透明性の向上だ。

 以前のFRBは悪名高い秘密主義的な組織だった。しかし今では、連邦公開市場委員会(FOMC)で出席者の意見が割れたことまで公表されるようになった。前議長アラン・グリーンスパンの時代には、なかなかあり得なかったことだ。

「彼はFOMCの運営方法に、そして外部に対して情報を発信する方法に変化をもたらした」と、しばらく前まで彼の下で働いていたドナルド・コーン前FRB副議長は言う。

 むろん、平坦な道のりではなかったはずだ。FRB議長となる前のバーナンキには、ニュージャージー州の教育委員会とプリンストン大学の経済学部よりも大きな組織を動かした経験はなかった。それでも彼は短期間で多くのことを学んだ。周囲の人たちも、バーナンキの適応能力の高さには驚いている。

 バーナンキの処方の下、このままアメリカ経済が順調に回復を続ければ、来年のバレンタインデーのFRBはもっと華やぐことだろう。

[2012年2月29日号掲載]

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