最新記事

アップル

白いiPhoneはなぜ作りにくいのか

新型のiPhone 4が黒い機種しか入手できないのは部品メーカーのせいか、それとも──

2010年6月28日(月)16時58分
マーサ・ホワイト

白か黒か 当面は黒いiPhone 4で我慢するしかない Robert Galbraith-Reuters

 6月24日、iPhoneが新しく生まれ変わった。だが、新型のiPhone 4をすぐ手に入れたければ黒い機種で我慢するしかないことに、アップル信奉者は不満を漏らしている。
 
 自動車大手フォードの創業者ヘンリー・フォードに倣ってアップルが「製品の標準化」を決めたわけではない。同社の発表によると、白いiPhoneは「製造に想定以上の困難が伴う」ため、7月中旬まで販売できないという。

 なぜ色の違いによって問題が生じるのだろうか。

 いくつかの理由が考えられる。まず、白い機種の需要にアップルが不意を突かれた可能性がある。「製造上の困難」は失態を取り繕うための表現かもしれない。

 下請け業者の側に問題がある可能性もある。iPhone 4の部品メーカーの大半は、白い機種のある従来のiPhone 3GSと同じだが、ディスプレイはiPad用と同じく韓国のLGが製造している。iPhone 4のディスプレイは960x640ピクセルで3GSより解像度が高く、製造がより困難かもしれない。
 

白と黒は別の部品メーカー?

 LGは他社のスマートフォン(高機能携帯)にも、iPhoneより解像度は低いがディスプレイを供給している。他社向け部品の不足は報じられていないため、アップル仕様のディスプレイが製造のボトルネックになっているのではないかとの指摘が出ている。

 そうだとしても、なぜ黒色ではなく白色のiPhoneだけに影響があるのか。それを知るには、秘密のベールに覆われたアップルのサプライチェーン(原材料の調達から製造・販売までの流れ)を探る必要がある。

 白いiPhoneを白くしているのは、非常に複雑なレシピの中で使われるわずか1、2種の原料だ。問題の部品は複数の部品メーカーに作らせている可能性があり、白と黒を別々のメーカーに委託しているのかもしれない。

 白い部品の注文は黒い部品よりもはるかに少ないはず。このため、白担当の部品メーカーが何らかの事情で生産を減速させると、部品不足が生じかねない。

「ゴリラガラス」と色の相性は

 通常は部品を余分に作っておくため、製造工程でトラブルがあっても消費者は気付かない。だがアップルの出荷計画で白いiPhoneが比較的少量だった場合、予備の製造もそれほど多くないかもしれない。少数派になるであろう機種のために全体の発売を延期することもないはずだ(グーグルで検索された回数は「黒いiPhone 4」が「白いiPhone 4」の10倍多い)。

 もうひとつの可能性は、色自体の問題だ。3GSは変色するとの苦情が多かった。ただし、それはiPhone本体のせいではなく別売ケースの色素のせいとも指摘されていた。

 新型iPhoneの表面にはアルミニウムを含んだ「ゴリラガラス」が使われており、それが犯人かもしれない。ガラスには傷が付きにくくするイオン交換処理を施してあり、白色はそうした処理との相性がよくないと推測する人もいる

 アップルが製造を委託している渦中の中国の電子製品メーカー富士康(フォックスコン)には責任はないようだ。従業員の相次ぐ自殺を受けた賃上げがコスト増にはつながったが、iPhoneの出荷を遅らせるような混乱が組み立て工程で発生したという報道はまったくない。

The Big Money特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア貿易相手国への制裁、米国民の6割超が賛成=世

ワールド

韓国の造船世界最大手、米国需要を取り込むため関連会

ワールド

中国、サウジに通商分野の連携強化要請

ワールド

中国、米ロとの3カ国核軍縮協議は「不合理で非現実的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に…
  • 10
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中