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2009.08.07

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「反日」本が救う微妙な心理

「日本に学ぶべきものはない」との主張が韓国で大受け

2009年8月7日(金)12時50分
小泉淳子

 敵を倒すにはまず敵を知るのが原則。韓国では80~90年代にかけて、教科書問題や従軍慰安婦問題で反日感情が吹き荒れたが、「克日(日本を克服する)」のためには日本に学ぶべきだという姿勢も芽生えていた。

 しかし、現実には経済大国日本との距離は広がるばかりのようにみえた。そんな「敗北意識」から韓国の人々を救ったのが、94年に出版された田麗玉(チョン・ヨオク)の『日本はない』(邦題は『悲しい日本人』、邦訳・たま出版)だ。KBSテレビの特派員として2年半東京で暮らした経験をつづったものだが、田は「日本に学ぶべきものはない」と断言。

 追いつけ追い越せではなく、追いつく必要がないという主張が人々の心をとらえたのだろう。『日本はない』はたちまちベストセラーになり、続編も登場するほどの話題を呼んだ。

 田は異文化の受容を拒み、ひたすら日本人の行動に眉をひそめる。脱いだ靴の向きをそろえる細かさにいらだち、割り勘は人間関係が希薄な証拠だと息巻く。その指摘の多くは目新しいものではないが、日本を「ただの国」扱いしたことが、韓国人の共感を得たことはまちがいない。

[2005年5月18日号掲載]

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