コラム

休暇とストレスの悲しい関係

2010年08月01日(日)17時00分

 夏の休暇中、一度も仕事のメールチェックをしない! という鉄の意志を持つ人はどのくらいいるのだろう。普段そんなにマメではない私でも、休暇に入って数日経つと少し不安になってくる。......何か大事な連絡が来ていたらどうしよう? いやいや、休暇中だからということで済まされるはず。でも、今メールを見なかったせいで後からかえって面倒なことになったら?――そんなわけで、結局は何回もパソコンを開き、なんだかんだと返信したりちょっとした雑務を済ませたりする羽目に。

 どうやらこうした傾向は各国共通なようで、イギリスのある調査機関によるこんな研究がデイリー・テレグラフ紙に紹介されていた。働く人の40%が休暇を終えて「かえってストレスを抱えて仕事に戻っている」と答え、90%が「休暇でたまったメールに返信するのを気に病んでいる」とのこと。さらに80%が「休暇中も頻繁にメールチェックをしたり電話をかけたりしてしまう」そうだ。

 テクノロジーの進化でいつでもどこでもアクセスできるせいで、仕事と休暇との切り替えが難しい、と専門家によるお決まりのコメントがこの調査には添えられているけれど、それでは、完全に仕事をシャットアウトすればハッピーな休暇を過ごしてストレスフリーで仕事に戻れるのか?

 そうとも言えないらしい。こちらはニューズウィークのサイエンス担当シャロン・ベグリーの記事。人々を休暇中と休暇後で追跡調査した08年のある研究によると、休暇を過ごしている人は「いつも以上に幸せだ」と感じているが、一度上昇した幸福レベルのせいで、かえって日常生活に戻ると憂鬱になってしまうという。さらに04年の調査では、「休暇を過ごした人は、休暇を取っていない人に比べてより不快な気分にはなっていない」という頼もしい結果が出たようだ。
 休暇によって幸せを感じられる唯一の例外は、休暇直前の気持ち。これから待ち受ける楽しみへの期待感で、このときが一番幸せを感じられるらしい。

 以下、べグリーによると――

 友人や同僚を調査した私の「非公式」調査結果によると、休暇を終えて幸せを感じられない理由は次の通り。家までのフライト(寝不足で目が真っ赤)のせい。クレジットカードの明細を見て自分のしてしまったことを思い知るから。仕事に戻らなければいけないため。どこか別の場所にいくべきだったのでは? などと考えてしまうから。レンタカーの後部座席で子供たちがしょっちゅうケンカしていたのを思い出しては疲れ果てるせい。次の休暇は何カ月も先で、おそらく年末までやってきそうもないから。

 そんなわけで、べグリーは今年、休暇に出かけるのはやめにしたとか。それでもやっぱり普通は取りたいし楽しみたいのが休暇。仕事のメールも休暇後のストレスも知ったことか、と考えてしまうのも、休暇前特有の高揚感のせいかもしれないけれど。

――編集部・高木由美子

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド、外資による国内企業投資への規制強化へ=政府

ワールド

米ロ首脳が電話会談、トランプ氏「停戦に向けた交渉を

ワールド

バイデン氏のがん診断、在任中の健康状態巡る疑問再燃

ワールド

ブラジル25年GDP予想を+2.4%に上方修正 イ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国は?
  • 4
    【裏切りの結婚式前夜】ハワイにひとりで飛んだ花嫁.…
  • 5
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 6
    実は別種だった...ユカタンで見つかった「新種ワニ」…
  • 7
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 8
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 9
    日本人女性の「更年期症状」が軽いのはなぜか?...専…
  • 10
    飛行機内の客に「マナーを守れ!」と動画まで撮影し…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 7
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 8
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 9
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 10
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story