コラム

情勢緊迫化でどうなる韓国経済

2010年05月27日(木)16時26分

 好調な韓国経済を北朝鮮が揺さぶっている。韓国が海軍哨戒艦の沈没を北朝鮮の魚雷攻撃によるものと断定し、これに反発した北朝鮮が強硬姿勢で対抗。朝鮮半島情勢が緊迫化を受けて、韓国の株価と通貨ウォンが急落している。

 韓国総合株価指数(KOSPI)は5月25日、ギリシャの財政危機をきっかけにした金融不安に朝鮮半島情勢の緊張が加わったことで外国人投資家が資金を引き揚げ、前日比2・8%安の1560・83に下落。4カ月ぶりの安値をつけた。通貨ウォンも、25日のソウル市場の対ドル相場は1ドル=1250ウォンと前日から2・8%下がり、9カ月ぶりのウォン安に。

 株価は翌日には機関投資家が買いに回ったことで1・4%値を戻したが、外国人投資家の資金の引き揚げは依然として続いている。ウォン相場の方も、急激なウォン安はおさまったものの、翌日も値下がりが続いた。

 韓国は今年2010年、高い経済成長を見込んでいた。OECD(経済協力開発機構)は今年の韓国の成長予測を4・4%から5・8%へと修正したばかり(もちろん、この予測では北朝鮮との関係悪化は勘案されていない)。この成長率はOECDに加盟する31カ国中、トルコ(今年6・8%の成長予測)に次いで高いもので、加盟国平均の2・7%の2倍を超えている。

 今後の情勢が韓国経済にどれだけの打撃を及ぼすのかは不透明だ。韓国企画財政部の尹增鉉(ユン・ジュンヒョン)長官は、「健全な財政と豊富な外貨準備によって韓国経済はどんな打撃も吸収できる。安全保障上の問題が経済に及ぼす影響は限定的だ」と、火消しに躍起だ。なにより心配なのは外資の流出で、政府に対して短期的な外資の動きを規制するよう求める意見も出ている。

 なにしろ今年11月にはせっかくソウルに誘致した20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)の開催も控えている。できれば穏便に解決したいというのが李明博(イ・ミョンバク)大統領の本音ではないだろうか。

――編集部・知久敏之

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、大統領発出など求め28日から再訪米 投

ワールド

英の数百万世帯、10月からエネ料金上昇に直面 上限

ビジネス

英生産者物価上昇率、6月は2年ぶりの高水準

ワールド

ロシア貿易相手国への制裁、米国民の6割超が賛成=世
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に…
  • 10
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story