絶滅危惧種

子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう見ていられない」と研究者

2018年8月10日(金)18時38分
キャサリン・ハイネット

死んで腹を見せる子供。これで雌とわかった Photo by Dave Ellifrit, Center for Whale Research

<もう3年も子供が生まれなった弱ったシャチの群れにやっと生まれた娘が、30分ほど母親と泳いだだけで動かなくなってしまった。死んだのだ。自分を責めるように、母シャチは子供を離さない。いったいいつまで?>

米ワシントン州のオリンピック半島沖で7月24日、死んだ我が子を連れて泳ぐ母シャチの姿が確認された。母シャチはJ35または「タレクア」と呼ばれている。絶滅危惧種に指定されているサザンレジデント・キラーホエールズの75頭いる群れのうちの1頭だ。子を連れて泳ぐその姿は8月8日にも確認され、これで16日目になる。

(右側に口を開いて横になった子供の顔が見える)


タレクアは、亡骸を頭にのせたりくわえたり押したりして運び、海に沈んでいくと潜って連れ帰る。子供が死んでからほとんど餌も口にしていないようで、このままでは、群れにとって貴重な繁殖期の雌であるタレクアまで病気になると、科学者たちは胸がつぶれる思いで母シャチの悲しみようを見守っていると、シアトル・タイムズは伝えた。

「泣けて仕方がない。まだ子供を離さないなんて信じられない」と、ワシントン大学の科学者デボラ・ジャイルズはシアトル・タイムズに語った。「J35の身体と心の健康が心配でたまらない」

(子供の死後4日め。子供を押して泳ぐタレクア)


タレクアと赤ん坊の悲劇は、絶滅の危機にあるこの群れ全体の問題だと、クジラ研究センターの創設者、ケン・バルコムは声明に書いた。

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