コラム

中国、2年ぶりのマイナス成長か

2022年07月01日(金)19時59分

そのなかで目立つのが、自動車の販売を回復させるための施策である。まず、6月1日から12月末までの間、車両価格が30万元以下、エンジン排気量2リットル以下の車については車両購入税の半額を免除する。同様の政策は2009年と2015年にも実施され、いずれも乗用車の販売拡大、特に中国系メーカーの販売拡大に効果があった。2009年と2015年の政策ではエンジン排気量1.6リットル以下が減税の対象であったが、今回は2.0リットル以下まで対象が広げられたため、中国で売られている乗用車のおよそ9割が減税の対象となる。

中国政府はさらに大都市での購入制限の緩和や都市間での中古車売買の解禁などを求めている。中国では2018年以降乗用車販売が減少傾向にあるが、その大きな理由は北京、上海、深圳など主要な大都市で乗用車の購入制限が行われていることにある。ナンバープレートの発行枚数が制限され、高値で競り落とすとか抽選に当たらない限り、車を買ってもナンバープレートがもらえず走れないのである。中央政府の購入制限緩和の要請にどう対応するかは地方政府に任されているものの、少なくとも減税措置の後押しにより、乗用車の販売台数は4~5月の大きな落ち込みから回復するであろう。年間ではむしろ昨年の販売台数2148万台を上回るのでは、と期待されている(『21世紀経済報道』2022年6月1日)。

農村でもEV推進

また、農村部における新エネルギー自動車(EV)の販売促進活動が展開されることになった。従来は充電設備の不足や値段の高さからEVの販売は都市が中心だったが、農村部での充電設備の建設を推進しつつ、EVの販路を拡大しようという政策である。

消費者の消費を直接に後押しするために、クーポンの配布も行われている。これは全国一律ではなく、地方政府がそれぞれ内容や金額を決めている。例えば、深圳市ではEVを購入すると最高で1万元のクーポンが与えられる。(つまり1万元値引きされる。)また、外食、ホテルでの宿泊などに対して100元の金券として使えるクーポンも各都市で発行されている。

企業に対する政策としては、付加価値税の還付を前倒しで行う政策が実施された。付加価値税の還付とは、企業の仕入れ品にかかっている付加価値税額が、売上に上乗せした付加価値税額を上回っている時、その差額分を税務署から還付してもらえる制度である。中国では2018年までは差額が生じた場合は翌年に繰り越すことになっていたが、2019年から企業は還付を受けられるようになった。今年はその還付を行う時期を前倒しし、年間で1兆6000億元の還付を行うことで企業の資金繰りを助けようとしている。

以上のように、自動車を中心に必死の景気回復策が打ち出されている。そのため、6月以降の鉱工業生産は4~5月の減産を回復する展開になるだろう。一方、サービス業に関しては、自動車に対するほど積極的な回復策が採られていない。そのため、4、5月にできなかった支出(例えば旅行)を6月以降に「リベンジ消費」するという展開にはなりにくい。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

世界秩序は変化「断絶ではない」、ECB総裁が加首相

ビジネス

シティ、3月も人員削減へ 1月の1000人削減後=

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、1月速報値51.5で横ばい 価

ビジネス

グリーン英中銀委員、インフレ圧力や賃金上昇指標を依
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 8
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story