コラム

「退屈しのぎ」で略奪へ...SNSに感化された10代の若者が暴徒と化している理由

2026年04月02日(木)11時30分

リアルタイムで野次馬が増殖する「フィードバック・ループ」

現場で撮影された動画がSNSを通じて即座に拡散され、リアルタイムで野次馬が増殖する「フィードバック・ループ」が形成される。このループによって初めは数十人規模でも短時間で数百人に膨張する。組織性はなく、若者特有の悪ふざけの群集心理が特徴だ。

「退屈しのぎ」や「憂さ晴らし」がキーワードだ。騒動の参加者は刺激を求める若者だ。地域社会とリアルな人間関係の希薄化が若者をデジタル空間へと押しやり、SNSでの呼びかけに無思慮に飛びつく構造が生まれている。


警察対応も従来の封じ込めではなく「分散・解体型戦術」が必要となる。地域社会の弱体化も長期的なリスクを高める。警察の排除命令は一時的な鎮静化には役立つが、SNSによる移動スピードの速さには追いつけない。若者たちの居場所の再構築が急務になっている。

フラッシュモブ型の暴動が繰り返される恐れ

学校・家庭・地域レベルでの予防的介入も強化すべきだ。今回のような現象は一過性ではなく、常態化する恐れすらある。デジタル・リテラシー教育の抜本的改革も求められる。対策をとらなければ休暇のたびに同じようなフラッシュモブ型暴動が繰り返されるかもしれない。

M&Sやセインズベリーズの臨時閉鎖は小売業にとって新たな問題を浮かび上がらせる。暴動の発生は予測不可能であり、従来の万引き対策や警備では対応できない。SNS経由の暴動は小売業にとって組織的な集団万引きと並ぶ新たなリスクになる。

ロンドン保守党のスーザン・ホール党首は英紙デーリー・テレグラフ(3月31日付)に「露骨な万引きからロンドンのショッピング街での暴動まで悪質行為が増加しているのを目の当たりにしている。こうした輩は警官不足で捕まらないことを知っている」と語っている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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