コラム

富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金持ちに厳しい」税制改革で大損した国

2025年06月26日(木)18時56分

英国の長者ブームは終わりつつある

英日曜紙サンデー・タイムズのリッチリスト(長者番付)を10年作成しているロバート・ワッツ氏は長者の素顔をのぞいてきた。この1年でリッチリスト史上最多の長者が英国を去った。「英国の長者ブームは終わりつつある。3年連続で長者の総資産は減少している」

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英日曜紙サンデー・タイムズのリッチリスト担当のロバート・ワッツ氏(筆者撮影)

2010~20年の間、英国は世界中の富裕層を惹きつける「磁石」のような存在だった。しかしノンドム制度の縮小・廃止、レイチェル・リーブス財務相の相続税改革、起業家優遇税制削減、キャピタルゲイン課税強化が影響したとワッツ氏はいう。

高級地区メイフェアでの強盗や治安悪化が懸念され、富裕層の間では「ロンドンが安全ではなくなった」との声が上がる。ベルグレイヴィアやメイフェアの豪邸を買っても5〜10年経っても資産価値が増えないと不満が漏れる。他都市と比べ「割に合わない」と見切られてしまった。

他国の魅力が向上し、ドバイの教育制度や生活インフラを高く評価する声が聞かれるようになった。英国での上場を廃止し米国市場に移る企業が後を絶たない。若いテック起業家の米国移住が加速し、若い富裕層の間で「英国はもはや拠点として魅力がない」との認識が広がっている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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