コラム

動き始めた年金支給68歳引き上げ論 これから考えるべき人生設計とは

2018年05月01日(火)14時30分

生涯労働を前提に、できるだけ早期にセカンドキャリアを

仮に政府の施策について不本意であったとしても、状況が改善する見込みは限りなく低い。わたしたちはこの現実を大前提に今後のライフプランを組み立てる必要があるだろう。

政府は表だっては説明していないが、政府が考えている新しい年金のあり方は、ズバリ、生涯労働との併用である。今後は可能な限り就労を続け、どうしても就労できなくなった段階で、はじめて年金に頼るという生き方である。

もし年金の支給開始が68歳に引き上げられれば、企業の側からも高齢者の雇用延長といった動きが出てくるだろう。だが生涯労働ということを前提にした場合、現役時代に勤めていた企業に一生面倒を見てもらうというのは現実的に難しい。何歳からに設定するのかは人それぞれだが、どこかしらの段階でセカンドキャリアというものを構築し、それを生涯の仕事にするという生き方を選択する必要がある。

もうひとつのキャリアを構築するというのは簡単な話ではなく、定年が近づいてから行動したのでは遅すぎる。可能なら40代の後半から、次のキャリア構築を意識した行動を取っておくべきだろう。

政府が副業の推奨をスタートしたこともあり、社内規定を見直す動きも増えている。まずは副業に取り組むことで、自分が持っているスキルや知識が、市場でどの程度の価値を生み出すのか、肌感覚で理解するのは大事なことである。

地域コミュニティも重要である。一生涯続けられる仕事は、実はネット上ではなく身近なところに存在している可能性もある。きっかけがないという人は、マンションの管理組合の活動などを通じて、地域の人と顔見知りになるのもよいだろう。

年金に関する議論は、どうしても後ろ向きになってしまいがちだが、状況を憂慮するだけでは問題は解決しない。新しくビジネスをスタートするという前向きな発想が必要である。


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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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