コラム

デート中に危険な雰囲気...イギリスのパブで「アンジェラ」を呼ぶと起こること

2023年12月22日(金)19時28分

インターネットの出会いの時代では、人々は時に、メッセージをやり取りしたりオンラインで会話しただけの人と、直接会うことになる。そうすると、事前のやり取りで自称していたような人物ではないことが判明するかもしれない。例えばずっと年齢が高めだったり、事前の印象のようないい人ではなさそうだったり、強引なほど性的に迫ってきたり。

僕が「アンジェラを呼んで」システムを知っている理由は、トイレにポスターが貼られているからだ。つまり、男子トイレに。「女子トイレだけでいいんじゃないの?」という趣旨の言葉を口にしている人も何人かいた。つまり、助けを求めるのは女性で、襲うのは男性なのだから、男子トイレにポスターが貼られていたらターゲットにこうやって逃げられるかもしれないぞと事前警告してしまうじゃないか、と。

事実、性暴力やその他の暴力の加害者は圧倒的に男性が多いが、男性が被害者になることだってあるのだ。前述の研究では、スパイクされた経験がある男性が女性の約半分の割合でいることが示唆されたが、それでもかなり高い数字だ。男性が女性を攻撃する、という単純な話にとどまらない。犯罪的なプレデター男性は、狙いたいものを攻撃するのだ。

英法律史上最悪のレイプ犯は若い男性ばかりを狙った

実際のところ、イギリスの法律史上最悪のレイプ犯が襲った被害者は、全員男性だった。レイナード・シナガは、マンチェスター市中心部の若い男性を標的にした。彼は2015年から2017年の逮捕までの間に、200人以上の男性をレイプまたは性的暴行したと考えられている。彼の手法は、酔っ払っていたり、具合が悪くなったりしている若者を探して「助け」を申し出、彼らを自分のアパートに連れ込み、薬を飲ませて暴行することだった。被害男性の多くは暴行を受けたことに気づいていなかった。警察が証拠を発見したのは、シナガが携帯電話で暴行を録画するのを好み、さらには「記念品」を保存していたからだ(身分証明書など被害者の持ち物の数々だ)。彼はまた、ソーシャルメディア上で自身の「征服」を自慢し、異性愛者の男性を「転向」させることに特にプライドを感じていた。

暴行を受けていたある被害者が目を覚まし、シナガを殴って逃げたため、シナガは捕まった。当初、警察は被害者のほうを暴行容疑で逮捕した。

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは下落154円前半、ポジション調整主

ワールド

中ロ首脳が北京で会談、両国関係「国際社会の安定要素

ワールド

ブラジル経済活動指数、第1四半期は上昇 3月は低下

ビジネス

マイクロソフト、中国の従業員700人超に国外転勤を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story