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検索結果をプロパガンダと陰謀論だらけにするデータボイド(データの空白)脆弱性
中国は検索サービスの根本的な脆弱性を狙って、デジタル影響工作に利用していた......(写真はイメージ)REUTERS/Florence Lo
<ネットの検索サービスの根本的な脆弱性を狙って、情報操作を仕掛けるデジタル影響工作が問題となっている......>
検索すると誤・偽情報を信じやすくなるという調査結果
最近のニュースはよくネットでのフェイクニュースやデマのことを取り上げるようになった。誤・偽情報への警戒感が高まったおかげで、政府広報でも「インターネット上の偽情報や誤情報にご注意!」といった記事を掲載して情報源の確認などの対策を解説している。
その一方で、ニュースや情報を確認するためにネットで検索すると誤った情報を信じる確率が高まるという調査結果が出ている。その論文「Deep in the Data Void: China's COVID-19 Disinformation Dominates Search Engine Results」ではニュースや情報を確認するためにネットで検索することをSOTEN(searching online to evaluate news)と呼ぶ。多くの人はSOTENを日常的に行っていると思うので、それが誤・偽情報を信じることに結びつくという結論に納得できないだろう。
この論文は記事を読んでからの時間による変化、検索前と後での比較、測定用プラグインをインストールして操作の詳細な追跡などさまざまな角度から調査分析を行っており、そのすべてで検索することが誤った情報を信じることにつながる結果となっている。
検索サービスの根本的な脆弱性=データボイド
原因として指摘されていたのはネットの検索サービスの根本的な脆弱性=データボイド(Data Void)だった。データボイドは文字通り、データが欠落していることである。検索を行った時、たくさんの結果があればその中からもっとも妥当と思われるものを優先的に表示する。公式サイトや信頼のおける官公庁のサイトあるいは、他のサイトから多くリンクされているサイトなど基準はさまざまで変化している。検索した時に優先的に表示されるようにサイトを調整するサーチエンジン対策SEOは今でもサイト運営者にとって重要だ。
では、検索結果が極端に少ない場合、つまりデータボイドの場合はどうなるのだろう? 通常なら優先度が低く、目に触れることもないサイトでも上位に表示されるようになってしまう。これを狙って、情報操作を仕掛けるデジタル影響工作がある。
かつては「ホロコーストはあったのか?」という偽情報の見出しをそのまま検索すると、そのタイトルあるいは類似の見出しを持つサイトが上位に表示された。誤・偽情報のタイトルをそのまま検索するとその言葉がそのまま該当するサイトとして問題のあるサイトが上位に表示されてしまう現象だ。多くの場合、ホロコーストを否定するサイトだった。現在の検索エンジンはそうならないようチューニングされているが、すべての言葉が調整されているわけではない。
データボイド脆弱性を中国のプロパガンダメディアが利用した
コロナ禍では中国がデータボイド脆弱性を利用してコロナ起源はアメリカ陸軍のフォート・デトリック研究所という偽情報の拡散を行っていた。2021年の8月から9月頃、グーグルニュースで「フォート・デトリック(Fort Detrick)」を検索すると、中国のプロパガンダメディアCGTNとGlobal Timesで占められていた。YouTubeでもトップの6つの検索結果のうち4つを中国メディアが占めた。
このように陰謀論などは、ふつうならほとんど検索されることのない固有名詞(「フォート・デトリック」など)あるいは文章(「ホロコーストはあったのか?」など)で生じるデータボイド脆弱性を悪用する。疑問を持った人々が検索すると、そこに表示されるのは陰謀論のサイトばかりになる。
データボイドの問題は検索エンジンだけではなく、SNSプラットフォームでの検索、動画サイトの検索、検索の際に表示されるサジェストワードなども起きる。グーグルでは検索に対して、回答がすぐに表示されることがある。たとえば「30+11=」と入力すると「41」という答えを表示した電卓が表示される。2017年に、「オバマはクーデターを計画しているか?」と入力すると、グーグルは「任期終了時に共産主義者によるクーデターを計画している可能性があります」と答えていた。今、日本語で同じことを入力すると、グーグルが偽情報を拡散している、というニュース記事が上位に表示される。検索エンジンは裏側でデータボイド脆弱性に対処してきた。ただ、まだ充分と呼べるレベルには達していない。
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