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アングル:長期金利2.5%は通過点か、くすぶる日銀「後手」リスクと財政懸念

2026年04月14日(火)16時41分

写真は日本銀行本店。2025年1月、東京で撮影。REUTERS/Issei Kato

Mariko Sakaguchi

[東京 14日 ロ‌イター] - 円債市場で長期金利が2.5%を挟むレンジに切り上が‌るとの見方が浮上している。米国とイランの交渉不調を受けて日銀の早期利上げ​観測が後退する中で、原油高止まりや円安で市場が予想する利上げ最終到達点(ターミナルレート)が一段と上昇、日銀の対応が後手に回る「ビハイン⁠ド・ザ・カーブ」のリスクが意識されている。​物価高対策による国債増発への懸念もあり、イールドカーブにスティープニング圧力がかかっている。

<ビハインド・ザ・カーブリスク>

中東情勢の先行き不透明感がくすぶる中、東京円債市場では13日、新発10年債利回り(長期金利)が一時2.490%と、1999年の運用部ショック時につけた2.44%を上回り、97年以来29年ぶりの高水準を付けた。新発5年債利回りは一時1.90%と過去最高水準、新発2年債利回りは一時1.41%と、1995年以来の水準まで上昇するなど、幅広い年限で高水準を付けた。

週末⁠に行われた米国とイランの戦闘終結に向けた協議は合意に至らず、米海軍はホルムズ海峡の封鎖に動いている。米WTI原油先物が再び1バレル=100ドルを超える水準となり、外為市場ではドルが159円後半まで上昇、インフレへの警戒感⁠が強まってい​る。

こうした中、市場では日銀の早期利上げ観測が後退。4月27―28日開催の金融政策決定会合での利上げ織り込みは前週末の6割弱から30%台前半まで低下した。一方、期待インフレ率の上昇に伴って、市場が予想するターミナルレートの指標となるオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)の2年先1カ月フォワード金利は13日時点で1.9%台まで上昇した。

金利上昇圧力の背景には、ビハインド・ザ・カーブへの根強い警戒感がある。ターミナルレートが切り上がる中で目先の利上げを見送れば、インフレが高進することでいずれ「倍速利上げ」や「連続利上げ」に追い込まれかねないとの懸念が広⁠がっている。

農林中金全共連アセットマネジメントのシニアファンドマネジャー、長友竜馬氏は「‌実質金利がマイナスの環境下が長く続いてしまうと、他国対比でみても、ビハイン・ド・ザ・カーブに陥るリスクが意識されやす⁠い」とみ⁠る。円安を通じたインフレ加速で日銀による利上げ局面が長期化するとの見方が出ている。

<補正予算編成の思惑>

SBI証券のチーフ債券ストラテジスト、道家映二氏は「財政リスクも意識されている」と指摘する。原油やドル/円の高止まりを背景に「物価高対策で補正予算の編成は既定路線になりつつある」とみている。

これまでのところ、前倒し債と国庫短期証券の増発で賄えるとみている市場参加者が多いが、補正での対応が「財政規律を損なわな‌い範囲で、危機時対応と市場で受け止められるかが焦点となってくる」(国内証券ストラテジスト)という。

SBI証の道家​氏は、長‌期金利2.5%は通過地点にすぎず、2.7%付近まで上昇余地が⁠あると予想する。仮に財政懸念で海外勢が超長期ゾー​ンを売り始めれば、長期金利は3%に向かうリスクシナリオがでてくる可能性もあるという。

日本証券業協会が公表する公社債店頭売買高によると、海外勢による超長期債の買い越し額は2025年12月以降、1兆円超で推移しており、売りに転じた場合の影響は大きくなりかねない。

<利上げ見送りでスティープニング圧力>

日銀が4月会合で利上げを見送った場合は「イールドカーブにスティープニング圧力がかかる」と関西みらい銀行のストラテジスト、石田武氏は指摘する。利上げ見送りによって円安が促‌されればインフレ懸念が一段と強まって金利が上昇するという負のスパイラルが生じる可能性がある。

このため、利上げ見送りの場合は「(日銀が)6月会合での利上げ観測につなげられるかが焦点だ」(国内銀の運用担当)という。半​年に1回ペースの利上げ姿勢を維持できれば、ビハインド・ザ・カーブリス⁠クはやや後退してくる可能性がある。

一方、日銀が4月会合で利上げした場合は、タカ派的との受け止めから円安懸念が和らぐ。ビハインド・ザ・カーブリスクの後退にもつながり、「長期金利が2.5%を超えるリスクはいったん低下する」(関西みらい銀の石田氏)とする。それでも、財政拡大​懸念が再び意識されれば、超長期ゾーンの金利上昇圧力に引っ張られる形で、長期金利が上昇していく可能性は残る。

ニッセイ基礎研究所の金融調査室長、福本勇樹氏は、日銀による利上げフェーズが長く続くとの見方が広がりつつあるとみる。4月の日銀会合にかけてターミナルレート予想が上振れたままであれば「2.5%―2.6%の長期金利水準が市場参加者の一つの目線となりやすい」という。

(坂口茉莉子 編集:平田紀之 石田仁志)

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