焦点:ハンガリー総選挙で圧勝の野党ティサ、公約実行が改革推進の鍵
4月12日投開票のハンガリー総選挙で圧勝した、野党ティサのマジャル党首。同日、ブダペストで撮影。REUTERS/Leonhard Foeger
Gergely Szakacs Krisztina Than
[ブダペスト 13日 ロイター] - 12日に投開票されたハンガリーの議会総選挙 nL6N40V08Rは、ペーテル・マジャル氏が率いる新興野党の中道右派「ティサ(尊重と自由)」が地滑り的な勝利を納め、国民から圧倒的な信任を得た。これによりティサは、改革を大胆に進め、法の支配を強化し、さらには欧州連合(EU)から数十億ユーロ規模の補助金を手に入れるといった政策を進める上で大きな裁量を手に入れた。
専門家によると、新政権が議会で3分の2の議席を確保するという見通しは、EUや市場にとって最も望ましいシナリオだ。しかし依然として多くの不確実性が残っており、慎重な外交筋や市場関係者は、新政権が追い風を全面的に生かすにはまず公約を実行に移す必要があると指摘している。もっとも、市場はいまのところ次期政権に対して「疑わしきは罰せず」の姿勢を示しているようだ。
米調査会社ユーラシア・グループのマネジングディレクター、ムジタバ・ラーマン氏は「今回の選挙結果で流れが大きく変わり、マジャル氏は思うままに政策を進めることができるようになるだろう。最も重要なのは、オルバン氏の専制体制を解体し、EUが求めている全ての改革を実行できることだ」と指摘。「こうした取り組みにより、EUの復興・強靭化ファシリティ(RRF)から少なくとも64億ユーロ(74億6000万ドル)の補助金が素早く実行され、実体経済を下支えするとともに、ティサの勝利をさらに確固たるものにするはずだ」と述べた。
<同盟関係を再構築へ>
ハンガリーはEU懐疑派のオルバン氏が16年間にわたって政権を握り、移民問題からロシアとの関係まで幅広い政策を巡ってEUとたびたび衝突を起こしてきたことから、今回の総選挙は今年欧州で最も市場に影響を与える選挙として注目されてきた。
オルバン氏は世論調査で劣勢に立ちながらも選挙戦では自信を見せ続け、EU内でハンガリーの国民的アイデンティティと伝統的キリスト教的価値観を守ることが目標だと述べ、不正を全面的に否定していた。
しかし市場は数週間前から政権交代を織り込んでおり、オルバン氏に関連する企業の株価は急落し、為替市場の変動指数は選挙後に大きな為替相場変動が起こる可能性を示していた。
マジャル氏はオルバン氏の敗北宣言後、「ヨーロッパ、ヨーロッパ」と歓声を上げる支持者に向けて演説。ハンガリーをEUおよび北大西洋条約機構(NATO)の強力な同盟国とし、長年の対立で損なわれた関係を再構築すると誓った。
また「憲法改正を可能にする3分の2の議決を得ており、抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)の体制を取り戻す」と訴え、「欧州検察庁(EPPO)に参加し、わが国の民主主義がきちんと機能することを保証する。自由なハンガリーを誰かの私物のように支配させたり、見捨てさせたりすることは、もう二度とない」と語った。
過去3年間ほぼ停滞していたハンガリー経済を立て直すマジャル氏の計画の中核の1つが、民主主義が損なわれたとしてオルバン政権下で凍結されたEU補助金の獲得だ。
GZEROメディアのイアン・ブレマー氏によると「憲法改正が可能な議席を確保したことで状況が完全に変わった」。「マジャル氏は憲法を改正し、各種政府機関からオルバン氏の右派与党『フィデス・ハンガリー市民連盟』派を一掃してEU補助金に全面的にアクセスし、さらには主要な選挙公約であるユーロ導入さえ可能になる」と述べた。
マジャル氏は12日、検事総長、最高裁判所長官、メディア当局のトップなどに辞任を求め、過去16年間で公的機関がオルバン派に握られてきたと述べた。
<外交筋や格付け機関は慎重>
マジャル氏は、EUの条件を満たすために、司法の独立性や公共調達の強化を含む大規模な反腐敗運動を展開すると約束している。しかしS&Pグローバルやフィッチ・レーティングスといった格付け機関、EU外交筋の一部は、パンデミック復興基金のうちハンガリーにまだ利用可能な資金が実際に実行されるかどうかについて懐疑的だ。
外交官やアナリストらは、23年のポーランド総選挙で親EU派のトゥスク政権が、前任の民族主義政権の政策を撤回すると約束し、EU補助金を迅速に実行された事例をハンガーに当てはめるのは的外れかもしれないと指摘している。
あるEU外交筋は「ポーランドのトゥスク首相に対して行ったように、約束だけを根拠に資金を支給する考えはない。トゥスク氏は多くの公約を実現できなかったからだ」と述べた。その上で、「ティサは実際に政策を進めることができると示す必要がある。ただし、法律上どうしても不可能な点があり、それが客観的に証明できるなら、EUとして何らかの対応策を見いだす余地はあるだろう」と述べた。
キャピタル・エコノミクスのアナリストは、EU補助金の実行によりハンガリーの財政赤字の対国内総生産(GDP)比は20年代末までに3.5―4%程度に縮小し、これにより現在ユーロ圏外でEU加盟国中最も高い水準となっている公的債務の安定化につながる可能性があると述べている。
キャピタル・エコノミクスのリアム・ピーチ氏はリポートで、「今回の選挙結果はハンガリー経済にとって大きな転換点になる」と指摘。「市場のポジティブな反応が持続するかどうかは、ティサがどれだけ迅速にEUとの関係を再構築し、補助金の実行を確実にして、信頼できる中期的な財政の拠り所を示すかどうかにかかっている」と述べた。





