焦点:ホルムズ海峡の護衛に暗雲、紅海の失敗が影 イランの脅威で供給不安
写真はオマーンのマスカットに停泊するタンカー。3月7日、オマーンのマスカットで撮影。REUTERS/Benoit Tessier
Lisa Baertlein Jonathan Saul
[ロサンゼルス/ロンドン 25日 ロイター] - エネルギー輸送のためにホルムズ海峡における航行の安全を保護する方策について交渉を続けている西側同盟国は厳しい現実に直面している。数年前から紅海で開始された同様の試みは数十億ドルのコストがかかりながらも、イエメンの武装組織フーシ派に対して最終的に失敗したからだ。
船舶4隻が沈没し、武器に10億ドル以上を投じながら、海運業界がいまだに航路を回避し続けているという紅海の多大な犠牲は、より複雑な状況にあるホルムズ海峡に暗い影を落としている。世界の原油と液化天然ガス(LNG)供給量のうち約5分の1が通過するこの海運上の動脈は現在、フーシ派よりもはるかに強力な敵対者であるイランが事実上封鎖している。
イランがホルムズ海峡の脅威となり、近隣のペルシャ湾岸諸国のエネルギーインフラに対して攻撃しているため、史上最悪のエネルギー・ガス供給の混乱が生じて原油価格が急騰。海峡が再開されない限り、供給不足はより深刻化し世界中でエネルギー、食料、その他無数の製品のコストを上昇させる恐れがある。
ロイターがインタビューした19人の安全保障と海事の専門家たちは、米国と同盟国がホルムズ海峡を保護する上で直面する無数の課題を指摘した。イランはフーシ派よりもはるかに高度な軍事力として安価なドローン、浮遊機雷、ミサイルの兵器庫を保有し、険しい山岳地帯の海岸から狭い水路へ容易にアクセスできる。
イラン・イラク戦争時の1988年にホルムズ海峡を通過する米国のタンカー護衛に携わった退役海軍少将のマーク・モンゴメリー氏は「ホルムズ海峡の護衛作戦は紅海よりもはるかに困難だ」と語った。
そうした事情はトランプ米大統領にとって大きな懸念要素と言える。トランプ氏は11月の議会中間選挙を控えてガソリン価格が1ガロン当たり4ドル近くになっている現状について、インフレに疲弊した有権者に言い訳をしようとしているからだ。エネルギー価格高騰は、水路が再開されるまで完全に解消されないだろう、というのが専門家の見立てだ。
トランプ氏は米国の関与を巡って、当初は米海軍が必要に応じて護衛すると述べたが、その後ごく最近は他国が護衛を主導すべきだと主張するなど発言が揺れている。
あるイランの国会議員は先週国営メディアに対して、イランがホルムズ海峡の利用を希望する船舶に対して通行料を徴収する案を検討していると話した。
<ホルムズの泥沼>
フーシ派から紅海の航行を保護するための米国主導の任務は2023年12月に始まり、欧州諸国が数カ月後に独自の作戦で加わった。連合軍は何百ものドローンやミサイルを撃墜したものの、フーシ派は24年から25年の間に4隻の船舶を沈没させた。海運業者の多くは今や、かつて世界貿易の12%を担ったこの航路を回避しており、ソマリアやエチオピア沖の「アフリカの角」を通過して喜望峰を経由する、はるかに長い航路を選択している。
調査会社CNAの海軍アナリストのジョシュア・タリス氏は「戦術的、また運用面で勝利したが、戦略的には引き分けあるいは敗北だった」と述べた。
ホルムズ海峡周辺の危険地帯は、紅海に流れ込むバブ・エルマンデブ海峡周辺のフーシ派の攻撃エリアよりも最大で5倍の広さがある。イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)はフーシ派と異なって独自の兵器工場と資金源を持つ専門的な軍隊だ。
一部の軍事専門家によると、ホルムズ海峡の護衛は機動作戦を実施するスペース不足から生じる制約を補うために戦闘機、ドローン、ヘリコプターが支援する駆逐艦のような大型戦闘艦が最大で十数隻必要になるという。上空からの航空支援は飛来するドローンだけでなく、海上交通に容易に紛れ込める爆発物を積んだ有人・無人の小型ボートから保護するために極めて重要となるだろう。
SSYのアナリストたちは「駆逐艦はミサイルを迎撃できるが、同時に機雷を掃海し、複数の方向から押し寄せるドローンボートの大群に対処し、衛星利用測位システム(GPS)妨害を管理することはできない」と述べた。
中東・北アフリカ欧州研究所のアデル・バカワン所長は「弾道ミサイル、ドローン、浮遊機雷があり、たとえこれら3つの能力を破壊できたとしても自爆作戦がある」と話した。
英国海軍の退役指揮官トム・シャープ氏は機雷や重武装の小型潜水艦について、米国が紅海で経験しなかった脅威だと指摘。「もしも(米軍が)この作戦で駆逐艦を1隻でも失えば、計算が全て狂ってしまう。それは300人の命(の喪失)を意味するのだ」と語った。
ヘグセス米国防長官は今月初め、イランがホルムズ海峡に10個余りの機雷を敷設したとの報道があった後、敷設を裏付ける明確な証拠はないと述べた。
ハドソン研究所の自律型戦闘専門家のブライアン・クラーク氏は機雷除去、軍事護衛、空域パトロールを組み合わせれば、ホルムズ海峡の交通を最終的に再開できるはずだと述べた。
クラーク氏は「IRGCの脅威を最終的に弱体化させるまで、数カ月間はその作戦を継続しなければならないかもしれない」と付け加えた。





