焦点:中東紛争でガソリン高騰、米中間選挙に向け共和党に逆風強まる
写真は3月10日、米カリフォルニア州ロサンゼルスのガソリンスタンド付近で撮影。REUTERS/Mike Blake
Joseph Ax David Morgan
[10日 ロイター] - トランプ米大統領が2月24日の一般教書演説で、11月の議会中間選挙において有権者が与党共和党を多数派にとどまらせるべき理由として、自らがガソリン価格を押し下げた点を挙げて、バイデン前政権が残した「惨禍」を終わらせたと自慢した。
しかしそれから2週間でガソリン価格は1ガロン当たり0.60ドル近くも高騰している。トランプ氏がイスラエルとともにイランへの攻撃を開始し、戦火が中東の近隣諸国に広がったことによるエネルギー危機の高まりが原因だ。
消費者が感じるガソリン高の痛みはあっという間に、トランプ氏と共和党にとって政治的な頭痛の種となりつつある。もともと野党民主党との議席差が少ない共和党だが、多数派を維持できる見通しが次第に危うくなってきた。
9日に劇的な上昇を見せた原油価格は10日にやや落ち着き、11月3日の中間選挙までなお9カ月近くある以上、値動きがどうなるかはまだ分からない。ただイラン攻撃が始まる前から、米国の有権者は生活費高騰への怒りを抱き、トランプ氏の不十分な対応に不満を持っていたことが、ロイター/イプソス世論調査から読み取れる。
共和党ストラテジストのジェイコブ・ペリー氏は「ガソリン価格をごまかすことはできない。その他の事についてはうそをつけるし、全部『フェイクニュース』だと主張するのは可能だ。それでもあらゆる街角には、事態がいかに悪いかを示す巨大な(ガソリン価格の)表示がある。文字通り毎日の通勤途中に思い出す存在だ」と述べた。
<アフォーダビリティーが争点に>
民主党は、中間選挙に向けてアフォーダビリティー(暮らしやすさ)を中心的な争点にする構えだ。この選挙で同党が上院の多数派を獲得するのはより難しいが、下院では共和党から3議席さえ奪えば過半数を制することができる。
下院民主党トップのジェフリーズ院内総務は「トランプは米国に黄金時代がくると約束した。ところが共和党は米経済を破壊し、ガソリン価格は制御不能になっているのに過激主義者が何十億ドルも使って中東で爆撃している」とXに投稿した。
共和党議員の一部もガソリン高騰は有権者にとって懸念要素だと認める。ただそうした議員は、高騰は一時的だとするトランプ氏の主張を引き合いに出し、国内のエネルギー増産を図る政権の取り組みによって痛みが緩和されると反論している。
<公約と現実のギャップ>
10日のガソリン全米平均価格は1ガロン当たり3.54ドルと、イラン攻撃開始以降で約19%上昇した。
政権内でも心配が広がっていることを物語るように、トランプ氏は原油価格抑制に向けた幾つかの措置を検討する方針だとロイターが9日に報じた。具体的には戦略石油備蓄放出や輸出制限、各種税制優遇などだ。トランプ氏は9日、石油関連の制裁措置を一部解除する意向も示したが、詳細は明らかにしていない。
トランプ氏は2024年の選挙で、インフレを退治し、エネルギー価格を引き下げ、生活費負担を軽減することを公約として大統領に返り咲いただけに、ガソリン高騰はことのほかダメージが大きくなる可能性がある。
共和党のダビッドソン下院議員は、ガソリン高は中間選挙に向けた「懸念要素」だと指摘した。
<説得力欠く発言内容>
トランプ氏自身のガソリン高に関する発言も、有権者の不安を払しょくできる内容には見えない。
先週のロイターのインタビューでは、ガソリン価格について何も心配していないし、イランとの戦闘が終われば下がると予想しながらも「上がるなら上がるだろう」と投げやりとも取れる言葉を付け加えた。
トランプ氏は自身のソーシャルメディアに「短期的な原油価格(上昇)」は世界の安全保障のために「支払う非常に小さい対価」に過ぎないとの見解を改めて投稿した。
しかしトランプ氏が説明するイラン攻撃の根拠が二転三転しているため、米経済に混乱を起こすだけの価値があるとの主張は説得力を得にくくなっている。政権高官からは、イランが差し迫った脅威をもたらしている証拠は提示されていなかったし、何よりトランプ氏自身が、昨年6月のイスラエルとの共同攻撃でイランの核開発能力が「除去された」と主張していた。
共和党ストラテジストのジョン・フィーヘリー氏は「米国民がイランを非常に気にしているとは思わない。彼らが気にかけているのはガソリン価格だ。国際情勢に発言機会の多くを費やし、食卓にかかわる問題への言及が乏しい大統領は、有権者に背を向けられる危険がある」と分析する。
その上で「私に言えるのは、イランとの戦闘はできる限り速やかに終えるのが得策ということだけだ」と述べた。





