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アングル:「被告になる時間はない」トランプ氏、起こした訴訟は継続

2026年02月19日(木)15時12分

トランプ米大統領。1月29日、ワシントンで撮影。REUTERS/Kylie Cooper

Tom ‌Hals

[ウィルミントン(米デラウェア州) 13日 ロイター] - トランプ米大統領が2024年‌11月に再選を果たした直後のことだった。トランプ氏は自身が共同創業した「トゥルース・ソーシャル」の元関​係者2人から合意済み報酬の未払いを巡って訴えられていたが、同氏の担当弁護士らはデラウェア州の裁判所に対し、大統領は多忙で民事訴訟に対応する時間がないため審理を停止すべきだと主張した。

トランプ氏の⁠担当弁護士はこの民事訴訟が大統領の職務の妨げになるとし​て、一時的な免責を認めるよう州裁のウィル判事に求めた。

だが同判事が判断を下さないうちに、トランプ氏は中西部アイオワ州の地元紙デモイン・レジスターと世論調査会社のJ・アン・セルザー元社長を提訴した。「訴訟に対応する時間がない」という自身の主張と矛盾する行動だった。

数十年にわたり、批判に対し訴訟で反撃してきたトランプ氏は、その後も個人として少なくとも5件の訴訟を起こし、総額数百億ドルの損害賠償を求めている。

同氏は米出版社ペンギン・ランダム・ハウスやニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、英放送協会(BBC)⁠の3社を相手取り名誉毀損訴訟を起こした。米金融大手JPモルガン・チェースには、政治的理由で顧客との取引を停止する「デバンキング」を行ったとして損害賠償を請求。さらに、米内国歳入庁(IRS)も訴えた。自身の納税申告書がメディアに開示されるのを防がなかったのは違法だというのがトランプ⁠氏の主張だ。

報道​各社とJPモルガンは不正行為を否定した。内国歳入庁は訴訟についてコメントしておらず、法廷でも回答していない。

デラウェア州の訴訟は、最終的にウィル判事が訴え自体を却下した。ただし、その判断は免責特権を理由とするものではなかった。

<トランプ氏の主張を逆手に>

訴えられた側の一部は、トランプ氏が「自分は訴訟対応に時間を割けない」と主張する以上、他人を訴えることも許されないはずだとして、同氏の免責主張を逆手に取り反発している。

「『野球をやろう。だが、打席に立てるのは私だけだ』と言っているようなものだ」――ミシガン大学ロースクールのリチャード・プリマス教授は、トランプ氏の免責に関する立場についてこう表現した。

米連邦最高裁は1997年、アーカンソー州知事時代のクリントン元大統領(民主)を相手取った裁判で、大統領は民事訴訟から免責され⁠ないと判断。州の元州職員ポーラ・ジョーンズさんに対する名誉毀損および性的嫌がらせの審理継続を認めた。

2024年のトランプ大統領に対す‌る判決で、最高裁は「大統領は在任中の公務に対する刑事訴追において、広範な免責特権を有する」と判断したが、民事訴訟には適用されなかった。

トランプ氏が起こした訴⁠訟のうち、免責⁠主張を逆手に取ろうとしているのが、同氏に訴えられた世論調査会社のセルザー元社長だ。訴状によるとトランプ氏は、24年11月2日に公表された調査でデモイン・レジスター紙とセルザー氏による「大胆な選挙介入」があったと主張。損害賠償を求めている。

世論調査は同州で対抗馬のカマラ・ハリス候補(民主)がトランプ氏をリードしているという内容だったが、実際の選挙ではトランプ氏が圧勝していた。

セルザー氏はトランプ氏が大統領の(多忙な)任期中は審理を停止するよう求めたが認められなかった。

被告側の弁護士は、トランプ氏には自身の政治的目的のために裁判を悪用してきた過去があると主張‌。大統領としての免責を盾に、メディアに対して有利に立ち回りかねないと述べた。

トランプ氏は、自ら起こした訴訟では被告側に対し、「ディスカバリー」​と呼ばれる文‌書や証言の提出を求めることができる。だが逆に、自身⁠が同じように提出を求められた場合には、免責を理由に拒む可能性があるという。

デ​モイン・レジスター紙側のニック・クラインフェルト弁護士は1月30日、アイオワ地裁の弁論で「一方的な証拠開示、報道機関に対する一方的な調査が行われていただろう」と述べた。

地裁のビーティー判事は、大統領に司法命令に従うよう強制する自身の権限には限界があることを認めた。

「違反1件につき500ドル(約7万6000円)の罰金を科し、場合によっては6月の禁錮刑を命じることもできる」と同判事は述べた。「だが、実際にはかなりの反発があるだろうと確信している」

ビーティー判事は2月10日、トランプ氏の訴訟を保留にするというセルザー氏の要請を却下した。

<中傷と不当な扱い>

トランプ氏の弁護団はロイターへの声明で、免責特権は大‌統領職にとって極めて重要で、米国憲法に定められており、判例にも裏付けられていると主張した。

さらに「トランプ大統領は全ての米国民を代表し、そして米国民と共に、自身を中傷し不当に扱った者に責任を問うという憲法上の権利を当然有している。リベラル派や一部メディアの意向がどうあれ、大統領に​就任したからといって、自分を中傷した相手に責任を問う権利まで失うわけではない」とも述べ⁠た。

これまでの裁判では、免責を理由とした判断は示されていない。

フロリダ州の控訴裁判所は、トランプ氏が22年にピュリツァー賞委員会に対して提起した名誉毀損訴訟の審理停止を求める同様の申し立てを却下した。トランプ氏は16年の大統領選へのロシアによる干渉と自身の選挙陣営との関係に関する報道を理由に、ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズに対し18年に共同​で授与された賞の取り消しを求めたが、委員会が拒否したことを受けて提訴していた。

控訴裁は、トランプ氏が訴訟に割く時間がないのであれば、自ら訴訟を取り下げることが可能だと述べた。

「ドナルド・トランプ氏は訴訟を乱発するタイプの当事者だ」とミシガン大学のプリマス教授は話した。大統領という立場にあることでトランプ氏の訴訟は、訴えられた側にとって極めて強い圧力になり得るのだと言う。

「法的に正当な要求があるのなら、提訴だけしておき、任期終了まで審理を停止するよう裁判所に求めることも可能だ。今すぐ賠償金が必要なわけでもないのだから」

ロイター
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