ニュース速報
ワールド

マクロスコープ:高市氏を待つ大所帯ゆえの「リスク」 党内ガバナンスは政策実現に影響

2026年02月12日(木)11時28分

写真は高市早苗首相。2月9日、都内の自民党本部で代表撮影。REUTERS

Tamiyuki Kihara Yoshifumi ‌Takemoto

[東京 12日 ロイター] - 衆議院選挙で歴史的な圧勝‌を遂げた高市早苗総裁(首相)率いる自民党が、18日召集の特別国会に​臨む。衆院定数(465議席)の約68%に当たる316議席を占める巨大政党だが、党内からは大所帯ゆえの「リスク」を案じる声が出始めた。党内ガ⁠バナンスが崩れれば高市氏の政策遂行​に影響しかねないだけに、専門家は「おごり高ぶらないことが大事」と指摘する。

<「トップダウンか議論尊重か」>

「政策決定プロセスが大きく変わることになるかもしれない」。自民中堅はこう話した。長らく政権を担ってきた自民は、党内の政務調査会でテーマごとに政策議論を重ね、連立与党との協議や総務会の取りまとめを経て法案を作成してきた。この過程で原則とし⁠て党議拘束をかけるため、政府側と交渉してより党内の賛同が得やすいように修正することもあった。

ただ、今回の選挙での圧勝は「高市人気」によるところが大きい。有権者が高市氏の政策に期⁠待した結果​でもあり、前出の中堅は「首相官邸に力が集中する。党政調も高市首相の言う通りに法案をまとめざるを得ないだろう」と話す。高市氏が超党派の「国民会議」に課題や財源などの議論を委ねる考えを示している消費減税についても同様だ。

一方で、あまりに官邸主導の色が強まれば、高市氏の政策に懐疑的なベテランを中心に、党内から反発の声が出かねないリスクがある。ある自民の政務三役経験者は「高市氏の党運営で当面の課題となるのは、あらゆる意思決定が党内でスムーズに受け入れられるかどう⁠かだ」と指摘。「トップダウンで強引に通すのか、議論を尊重するのか、それによって高‌市氏に対する党内の評価が変わってくるだろう」と語った。

<「すべて高市氏の責任に」>

もう一つの課題は、新人議員⁠の「リス⁠ク回避」だ。今回の衆院選で当選した新人議員は66人に上る。かつて、安倍晋三総裁の下で2012年の衆院選で当選した新人が、14年の衆院選で再選後に不祥事を連発して「魔の2回生」と呼ばれたこともあった。新人議員の「教育機関」とも言われてきた派閥は、裏金問題を機にほぼ解体されている。

複数の自民関係者によると、党執行部は今回当選した新人を地域ごとにグループ分けし、先輩議員か‌ら作法や国会審議の流れ、ソーシャルメディア(SNS)を使う際の注意点などについて指導を受ける体制​を作ると‌いう。

参議院で否決された法案を再可⁠決できるだけの議席を占めたことで、来る特別国会​での法案審議はほぼ自民主導で進むことになる。「法案審議がままならなくなった場合、これまでは野党や公明党のせいだと言い訳できたが今後はそうはいかない。すべては高市氏の責任ということになる」と、別の自民幹部は言う。

高市氏が有権者の支持を得た政策の実現に注力できるかどうか。党内ガバナンスをどう整えるかが、目の前の課題と言えそうだ。

<「実るほど頭を」と専門家>

こうした現状を専門家はどう見てい‌るのか。元自民党政調幹部職員で政治評論家の田村重信氏は、自民圧勝により「首相官邸と党のパワーバランスは変わる」と言い切る。「自民は長年、与党としてしっかりとした政策決定プロセスを構​築してきた。農林水産・国防など各専門部会で議論して、政調⁠審議会を経て総務会で了承される民主的なプロセスを踏んでいる。こうした過程は変わらないだろう」とした上で、「高市首相のリーダーシップでかつてない圧倒的多数の議席を獲得できたので、官邸のリーダーシップは強まるのは確実だ」と話す。

高​市氏が党内をまとめるための課題に「大量当選した新人の教育」を挙げ、「『政治家としてどうあらねばならないか』を(党の機関である)中央政治大学院を中心に研修・教育する必要がある」と指摘。「おごり高ぶらないことが大事だ。『実るほど頭を垂れる稲穂かな』の言葉通り、謙虚にやっていかないと国民から批判を受ける」とも語った。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ニコンが社長交代、大村CTOが昇格 徳成氏は会長に

ワールド

欧州産業界、エネルギー価格引き下げ要求 EUに緊急

ワールド

北朝鮮、金正恩氏の娘が後継者となる方向 政策関与の

ワールド

EXCLUSIVE-米、バングラデシュでの中国の存
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 8
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中