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アングル:米民主、重要選挙「全勝」で党勢回復に弾み NY市長や2州知事制す

2025年11月06日(木)11時57分

 米野党民主党が、トランプ大統領が就任して以降初めて行われた一連の重要な選挙で「全勝」を収めた。写真はニューヨーク市長に当選したマムダニ氏。11月4日、ニューヨークで撮影(2025年 ロイター/Jeenah Moon)

Joseph Ax Richard Cowan Andrea Shalal

[ワシントン 5日 ロイター] - 米野党民主党が、トランプ大統領が就任して以降初めて行われた一連の重要な選挙で「全勝」を収めた。大統領選からのほぼ1年間、足場の再構築を模索してきた同党にとっては待望の明るい要素と言える。

ニューヨーク市長に当選した34歳のゾーラン・マムダニ氏など新世代の民主党候補者は、東部ニュージャージーと南部バージニアの知事選も制したほか、西部カリフォルニア州では来年の議会中間選挙で民主党に有利となるような下院選挙区割り変更が住民投票によって承認された。

民主党全国委員会のマーティン委員長は記者団に「われわれは米国全土で勝った。(共和党優勢の)赤い地域、(与野党伯仲の)紫の地域、(民主党優勢の)青い地域のいずれでもだ」と胸を張った。

確かに激戦州の東部ペンシルベニアなどで実施された知名度の低い選挙では民主党の健闘は目を見張ったが、最大の選挙戦が展開されたのは民主党が優勢な州だった。

来年11月の中間選挙に向けて民主党が向き合うべき課題はなお多い。

例えば各種世論調査では、民主党は総じて人気が低調なままだ。なるほどトランプ氏の支持率は落ち込んでいるものの、10月下旬のロイター/イプソス調査によると、現時点で下院選挙があった場合、民主党と共和党に投票すると答えた人はほぼ同数だった。

党内の緊張もなお続く可能性がある。急進左派のマムダニ氏は反既成政治家の姿勢を打ち出して若い有権者の心をつかんだが、バージニアとニュージャージーの州知事選で勝利したアビゲイル・スパンバーガー前下院議員とマイキー・シェリル下院議員は、ともに安全保障畑の穏健派だ。

もっともマムダニ氏、スパンバーガー氏、シェリル氏の3人はそろって経済問題、特に生活費高騰を選挙の重要争点に据えた。トランプ氏が大統領に返り咲いたのはまさにこの問題を解決するとの約束が歓迎されたからだが、有権者は引き続き懸念していることが読み取れる。

マムダニ氏は5日の当選後初会見で「(トランプ)大統領にとっての教訓は、働く米国人の生活に広がる危機への認識が不十分ということだ。結果を出さなければならない」と強調した。

今回の一連の選挙を総括した民主党知事協会のメーガン・ミーハン・ドレイパー氏は「われわれは若い男性、大卒資格を持たない層から多くの票を獲得し、バージニアとニュージャージーでは中南米系が大きく民主党に傾いた」と述べた。

<反トランプ票取り込む>

トランプ氏が5日に南部フロリダ州マイアミで行った約1時間の演説は、これらの選挙での共和党の敗北を直接認めようとせず、昨年11月の大統領選勝利からちょうど1年を迎えたことをアピールする内容だった。

トランプ氏は、1年前に米国民は「主権を取り戻した」と語った後でマムダニ氏に批判の矛先を向けて「昨夜ニューヨークで少しばかり主権が失われた」と発言した。

ただトランプ氏は、以前示唆したニューヨーク市への連邦予算拠出差し止めには改めて触れず、自身のホームタウンであるニューヨークの成功を望むと述べ、マムダニ氏に「多少は」協力するかもしれないと付け加えた。

バージニア州とニュージャージー州は元来民主党の地盤だけに、スパンバーガー氏とシェリル氏の勝利自体に意外感はない。とはいえ、得票率で共和党の対立候補に2桁の差を付けた。これは昨年の大統領選でトランプ氏と民主党候補だったカマラ・ハリス氏の得票差に比べると、ずっと大きい。

スパンバーガー氏とシェリル氏は、それぞれの対立候補にトランプ氏の影を重ねて、トランプ氏の混乱に満ちた政策運営に対する民主党支持者や無党派層の不満を取り込もうとした。

AP通信と米国の複数のネットワークによる出口調査では、これらの州の有権者の3分の1強が投票先を決めた理由として「反トランプ」を挙げ、そうした有権者の大多数が民主党候補に票を入れた。

共和党にとっては、一連の選挙はトランプ氏自身が候補者にならない場合、同氏の支持層を動員するのが難しいかもしれないという警戒信号を点滅させる結果になった。バンス副大統領も5日のソーシャルメディアへの投稿で問題の存在を認め、昨年トランプ氏を支持してくれたが比較的忠誠心の薄い有権者を動員するため、もっと良い仕事をしなければならないと訴えた。

ロイター
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