ニュース速報
ワールド

米当局、3大PBMの薬価つり上げ指摘 73億ドル多く売り上げか

2025年01月15日(水)10時02分

1月14日、米連邦取引委員会(FTC)は発表した報告書で、米3大薬剤給付管理会社(PBM)が提携薬局で心臓病、がん、エイズウイルス(HIV)などの一部医薬品の価格を大幅につり上げていたと発表した。ワシントンのFTC本部前で11月撮影(2025年 ロイター/Benoit Tessier)

Ahmed Aboulenein

[ワシントン 14日 ロイター] - 米連邦取引委員会(FTC)は14日発表した報告書で、米3大薬剤給付管理会社(PBM)が提携薬局で心臓病、がん、エイズウイルス(HIV)などの一部医薬品の価格を大幅につり上げていたと発表した。3社はユナイテッドヘルス・グループ傘下のオプタム、CVSヘルス傘下のCVSケアマーク、シグナ傘下のエクスプレス・スクリプツで、2017―22年に薬局での価格を数百―数千%引き上げることで医薬品取得額より総額73億ドル多い売り上げを得ていたと指摘した。

FTCの報道担当者は「73億ドルはPBMが払い戻ししている金額と、PBMが医薬品を入手するのにかかったと推定される金額との差額だ」とし、この金額でも「おそらくは過少評価だろう」と付け加えた。

CVSヘルスの渉外担当副社長デビッド・ウィトラップ氏は、FTCがPBMの弱体化によって利益を得る業界である製薬会社と薬局からの証言を優先したと批判した。

オプタムの広報担当者は、同社が薬剤費を下げたことで患者側は24年に13億ドルを節約できたと述べた。

シグナのエクスプレス・スクリプツの広報担当者は、報告書の調査結果は誤解を招く内容だとし、この計算は私たちのヘルスプランが1年間に医薬品に費やす金額の2%にも満たない薬の部分集合に基づいていると反論した。

報告書によると、PBMは親会社が所有する薬局に対してより収益性が高い処方せん、すなわち1回当たり1000ドルを超える高額の処方せんを誘導していたことが示唆された。また、調査対象のほぼ全ての医薬品に関し、親会社が経営する薬局の方が系列外の薬局より多くの処方せん料を支払っていた。

FTCが問題視した薬剤の21年の患者負担額は2億7900万ドルとなり、17年以降に年間で14―21%上昇していた。

さらに、3大PBMは調査期間中に、PBMが薬局に支払う価格と保険プランから受け取る価格の差額を保持するスプレッド・プライシングによって14億ドルを得ていたとも指摘した。

FTCは昨年9月、製薬会社から数百万ドルのリベートを得るために糖尿病患者をより高価格のインスリン製剤に誘導したとして3大PBMを提訴していた。訴訟について各社はいずれも根拠はないと反論した。

CVSとユナイテッドヘルス、シグナの3社は昨年10月、各社の価格設定モデルに対する偏見があるとしてカーンFTC委員長を外すように要請していた。

今月20日に就任するトランプ次期米大統領(共和党)は、カーン氏の後任のFTC次期委員長にアンドリュー・ファーガソン委員を指名した。

FTCの報道担当者は、ファーガソン氏や共和党所属の委員がPBMに対するFTCの活動を支持すると確信していると述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

BofAのCEO、近い将来に退任せずと表明

ワールド

トランプ氏、反ファシスト運動「アンティファ」をテロ

ビジネス

家計の金融資産、6月末は2239兆円で最高更新 株

ワールド

アブダビ国営石油主導連合、豪サントスへの187億ド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中