ニュース速報
ワールド

訂正(18日配信)ヒズボラ通信機器爆発で12人死亡、イスラエル関与か ハンガリー企業製造

2024年09月20日(金)18時16分

レバノンで17日、同国に拠点を置く親イラン武装組織ヒズボラの戦闘員らが利用しているポケットベルのような通信機器の爆発が相次いだことを巡り、同国の治安当局高官と別の関係者はイスラエルの情報機関モサドが数カ月前に、ヒズボラが発注した台湾製機器5000個の内部に少量の爆発物を埋め込んだとの見方を示した。写真は9月17日、ベイルートで撮影(2024年 ロイター/Mohamed Azakir)

(18日配信記事で英文の訂正により6段落目の通信機器のモデル名を「AP924」から「ARー924」に修正します)

Laila Bassam Maya Gebeily

[ベイルート 18日 ロイター] - レバノンで17日、同国に拠点を置く親イラン武装組織ヒズボラの戦闘員らが利用していたポケットベルの爆発が相次いだことを巡り、レバノンの治安当局高官や関係筋は、イスラエルの情報機関モサドが数カ月前に、ヒズボラが発注した機器5000台の内部に爆発物を埋め込んだとの見方を示した。

レバノン当局によると、通信機器の爆発に伴い子ども2人を含む12人が死亡、3000人近くが負傷した。

レバノンの治安当局高官は、通信機器は台湾を拠点とするゴールド・アポロ製と指摘。しかしゴールド・アポロによると、ライセンス供与したハンガリーのブダペストに拠点を置くBACが製造したとしている。

レバノンのマカリ情報相は爆発について「イスラエルによる攻撃」と非難。ヒズボラもイスラエルの責任だと非難し、「正当な罰」を受けるとして報復を示唆した。ヒズボラは18日付の声明文で「ガザとその人々、そしてその抵抗を支援するための活動を続ける」と表明した。

ヒズボラのある幹部は、爆発はイスラエルとイスラム組織ハマスとのガザ紛争が勃発した昨年10月7日以来、ヒズボラにとって「最大の安全保障上の侵害」と指摘。米政府で以前、中東に関するインテリジェンスを担当していたジョナサン・パニコフ氏は「ヒズボラにとって、ここ数十年で最大の防諜上の失敗だ」と語った。

レバノンの治安当局高官はこの機器のモデル「ARー924(訂正)」の写真を確認した。その上で、モサドによって機器が「製造レベル」で改造されたとし、「モサドはコードを受信する爆発物を搭載した基板を内部に埋め込んだ。どのような手段でも検知するのは難しい。どんな装置やスキャナーを使ってもだ」と語った。コード化されたメッセージが送られて同時に爆発物が作動し、3000台の機器が爆発したという。

別の治安筋は最大3グラムの爆発物が機器内に隠され、数カ月間ヒズボラに検知されなかったと語った。

破壊された機器の画像をロイターが分析したところ、ゴールド・アポロ製のポケベルと一致する形式や背面のステッカーが写っていた。

<携帯電話は危険とヒズボラ指導者>

関係筋が今年ロイターに述べたところによると、ヒズボラ戦闘員はイスラエルによる位置追跡を回避するためローテク通信手段としてポケベルを使用していた。

ヒズボラは今年2月、組織の情報インフラの欠陥を補う狙いで戦闘計画を策定した。当時、イスラエルによる攻撃で既に約170人の戦闘員が殺害されていた。

ヒズボラ指導者ナスララ師は同月の演説で支持者に対し、携帯電話はイスラエルのスパイより危険だとし、電話機を壊すか埋めるか、鉄の箱にしまうべきだと警告。同グループは戦闘員や医療スタッフなどメンバーにポケベルを配布することを決定した。

イスラエルのガラント国防相は今週、オースティン米国防長官と電話会談し、ヒズボラとの対立を外交的に解決する窓は閉ざされつつあると述べた。

ただ、専門家は今回の爆発について、イスラエルが近く地上攻撃に乗り出すことを示す兆候ではなく、ヒズボラ内部に深く侵入できるイスラエル情報機関の能力を示していると指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、12日に中東に出発 人質解放に先立ちエ

ワールド

中国からの輸入、通商関係改善なければ「大部分」停止

ワールド

インド首相、米との貿易交渉の進展確認 トランプ氏と

ワールド

トランプ氏にノーベル平和賞を、ウ停戦実現なら=ゼレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 5
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 6
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 9
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 10
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 1
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中