ニュース速報

ワールド

焦点:米民主党、中絶巡る最高裁判断を中間選挙争点に 形勢逆転狙う

2022年06月27日(月)14時22分

 6月24日、米連邦最高裁が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード」判決を覆す判断を示したことについて、米民主党幹部らは今年11月の議会中間選挙に向けた争点としたい考えだ。写真は米首都ワシントンでデモに参加する、中絶容認派の人々(2022年 ロイター/Evelyn Hockstein)

[ワシントン 24日 ロイター] - 米連邦最高裁が24日、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード」判決を覆す判断を示したことについて、米民主党幹部らは今年11月の議会中間選挙に向けた争点としたい考えだ。共和党が議会過半数を制すれば、女性、避妊、同性愛同士の結婚などに悲惨な影響が及ぶと訴えていく。

最高裁は賛成5、反対4で今回の判断を下した。人工妊娠中絶に反対する共和党など保守派から歓迎の声が上がる一方、民主党や中絶の権利を主張する活動団体は、米国の女性の権利が後退すると抗議している。

民主党は今、11月8日の中間選挙で上下両院の過半数議席を失いかねない情勢だ。民主党のペロシ下院議長は記者団に対し「共和党は全米で中絶禁止を目論んでいる。議会過半数を握ってそれを実行するのを許すわけにはいかない」と主張。「われわれが11月に過半数を勝ち取らなければならないのは明白だ。全てがかかっている」と語った。

ペロシ氏はカトリック教徒。中絶の権利を支持していることを理由に先月、サンフランシスコの大司教から聖体拝領を禁じられた。

ロイター/イプソスの調査によると、米国民の約71%は、中絶に関する判断を政府が規制するのではなく、女性とその医師に委ねるべきだと考えている。民主党、共和党いずれの支持者層でも、こうした意見が過半数を占めた。

民主党は、最高裁の判断に対する有権者の怒りが上下両院での過半数維持につながると期待している。民主党は現在、両院で辛うじて過半数を握っている状態。バイデン大統領の支持率が低下しているため、大半の予測機関は今のところ、少なくとも下院では共和党が過半数を獲得する可能性が高いとの見通しを示している。

バイデン氏は24日、「この秋、ロー(対ウェード判決)が投票にかけられる。個人の自由が投票にかけられる。プライバシー、自由、平等、あらゆる権利がかかっている」と述べた。

民主党が、中絶の権利を巡るメッセージをどの程度、支持獲得に結びつけられるかは定かでない。民主党とバイデン氏は約1年半にわたってホワイトハウスと上下両院を支配しているにもかかわらず、中絶、投票権、社会保障費などの重要問題に関して、中核的な支持層を何度もがっかりさせてきた。

バイデン氏が成立を目指した投票権擁護法案を巡っては、共和党がフィリバスター(議事妨害)を行使するのを阻止するために民主党指導部がフィリバスター規則の変更を模索したが、党内のジョー・マンチン、キルステン・シネマ両議員の反対で変更できなかった。このため投票権擁護法案は採決に持ち込めていない。

銃規制強化法案は成立させることができたが、強力な銃規制推進派にとっては緩過ぎる内容にとどまった上、最高裁が23日、銃所持の権利を重視する判断を下したことで水を差された。

民主党上院トップのシューマー院内総務は中絶を巡る最高裁判断を受けて声明を出し、有権者は民主党と「MAGA共和党」のどちらを選ぶかという明確な選択を迫られると指摘した。MAGAはトランプ前大統領の標語である「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」の頭字語だ。

シューマー氏は「全国で中絶を禁止し、女性と医師らを刑務所に入れ、強姦や近親相姦(による妊娠)も例外としないことを望むのなら、もっとMAGA共和党議員を当選させればよい。そうでないなら、選択の自由を支持する民主党議員をもっと当選させ、ロー(対ウェード判決)を守ろう」と訴えた。

下院共和党は、今回の最高裁判決を歓迎し「わが国で中絶を終わらせる」道に進むと公言している。

下院共和党ナンバーツーのスティーブ・スカリス議員は「欠陥を持つロー対ウェード判決を覆す最高裁の判断により、各州と議会はようやく、われわれが過去50年間許されてこなかった方法で命を守れるようになる」と記者団に述べた。

(David Morgan記者)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-トランプ氏、原油高抑制策を検討

ワールド

トランプ氏、米地上部隊のイラン派遣巡る決定には「程

ワールド

情報BOX:G7、緊急石油備蓄の放出を検討 各国の

ワールド

仏、地中海・紅海へ海軍艦艇約12隻を派遣 同盟国防
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 7
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 8
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 9
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 10
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中