ニュース速報

ワールド

情報BOX:オミクロン株、新型コロナの「弱体化」版なのか

2021年12月06日(月)14時51分

 12月3日、新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」が世界的に拡大し、ワクチンの有効性が著しく損なわれる可能性が不安視されている。11月27日撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

[3日 ロイター] - 新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」が世界的に拡大し、ワクチンの有効性が著しく損なわれる可能性が不安視されている。

しかし、オミクロン株の全面解明を急いでいる科学者の一部からは、同株の症状が従来株よりも軽症なのではないか、との疑問も持ち上がっている。科学者らは結論を導くのは時期尚早だとくぎを刺しているが、現時点で分かっていることを以下にまとめた。 

<データが示す感染例>

欧州疾病予防管理センター(ECDC)によると、重症度を含めて情報が報告されている欧州の感染例70件を見ると、半分の患者は無症状、半分は軽症だった。

重症、入院、死亡の例はなかった。だが、ECDCは、感染症の全体像を正確に見極めるには数百人分のデータが必要であり、数週間かかると推定している。加えて、欧州でこれまでに確認された感染例は、大半が2度のワクチン接種済みの若い世代であり、重症化しにくい層だ。

オミクロン株の感染が急拡大している南アフリカでは、新型コロナに再び感染した、もしくはワクチン接種完了後に感染した患者の症状は軽い様子だ。

<オミクロンは「弱体化」版か>

科学者らは、オミクロン株を解析するための臨床研究を進めている。オミクロン株には従来株に見られなかった変異が約50カ所にあり、うち30カ所以上はウイルスが人の細胞に侵入する際に使う「スパイクタンパク質」。現在使用中のワクチンは、このスパイクタンパク質を標的にしている。

ペン免疫学研究所(米フィラデルフィア)のディレクター、ジョン・フェリー氏は「一般的に、ウイルスは多くの変異を積み重ねると、ある程度強さを失う」と解説する。オミクロン株の変異の一部はウイルスの侵入能力を損なわせ、スパイクタンパク質の行動を変えている可能性がある、とフェリー氏は言う。

一部の科学者は、オミクロン株が南アで、エイズウイルス(HIV)患者など免疫不全のある個人の中で数カ月かけて進化してきた、との仮説を立てている。そうだとすれば「ウイルスはこの宿主を殺さないように順応してきたことになる」と、フェリー氏は言う。

これに対し、オミクロン株は、ある動物を宿主として進化してきたとする仮説もある。

<オミクロンは支配的な株になるのか>

オミクロンを巡るもう1つの重要な疑問は、デルタ株に置き換わるか否かというものだ。デルタ株は今でも、世界中で確認された感染例の圧倒的多数を占めている。

オミクロンが支配的な株に置き換わるが、症状は軽くなるとすれば、このウイルスが最終的にインフルエンザのような季節性の脅威と化す転換点になるかもしれない、とスクリップス研究所免疫学微生物学部(米サンディエゴ)の感染症研究者、スミット・チャンダ氏は言う。

欧州のECDCは2日、オミクロン株が数カ月中に欧州で新型コロナ感染の半分以上を占める可能性がある、と予想した。

オミクロン株の研究は進行中だ。感染症専門家らは、その間もワクチン接種、追加接種、屋内や混雑した場所でのマスク着用、室内の換気、手洗いといった警戒を怠るべきではないと話している。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国が首脳会談要請、貿易・麻薬巡る隔たりで米は未回

ワールド

トランプ氏、NATOにロシア産原油購入停止要求 対

ワールド

アングル:インドでリアルマネーゲーム規制、ユーザー

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中