ニュース速報

ワールド

トランプ政権の移民規制、バイデン氏が就任初日に撤廃に着手

2021年01月21日(木)14時47分

バイデン米大統領は就任初日の20日、トランプ前大統領の強硬な移民政策の転換に向け、6つの大統領令に署名した。15日撮影(2021年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

[ワシントン 20日 ロイター] - バイデン米大統領は就任初日の20日、トランプ前大統領の強硬な移民政策の転換に向け、6つの大統領令に署名した。イスラム圏やアフリカなど13カ国からの入国制限の即時撤廃などが含まれた。

バイデン氏はまた、米国に居住する多数の不法移民に市民権獲得への道を開く法案を議会に送付した。

ホワイトハウスで開かれた式典で署名した大統領令には、13カ国からの入国制限撤廃のほか、メキシコ国境沿いの壁建設の停止、選挙区再編時に不法移民を人口に数えないようにするトランプ氏の大統領令の撤回が含まれた。

バイデン氏はまた、国土安全保障省と司法長官に対し、幼少期に親と米国に不法入国した若者「ドリーマー」の強制送還を猶予する「DACA」プログラムの有効性を確保するよう指示する覚書に署名。米国内に居住している不法移民の取り締まり強化を求めたトランプ氏の大統領令も撤回した。

国土安全保障省は20日、一部の強制送還について100日の猶予を与える覚書を出した。また、メキシコ国境を越えて米国に不法入国し保護申請した移民を審査の間メキシコ側で待機させる制度(Migrant Protection Protocols)について、新規受け付けを停止すると発表。すでにこの対象となっている移民の扱いについては説明していない。

就任初日の一連の措置によって、バイデン氏は移民問題を重視する姿勢を鮮明にした。トランプ氏は不法移民対策を目玉政策に据え、今月も退任を目前にしてメキシコ国境沿いの壁を視察した。

全米商工会議所の幹部、マイロン・ブリリアント氏は入国制限は「米国の価値観と整合的でなかった」とし、撤回は「国際ステージでの米国への信頼回復」につながると述べて歓迎の意を示した。

<不法移民の市民権取得に法案も>

バイデン氏が議員らと共有したメモによると、29日に追加の措置を講じ、米国の難民保護を復活させ、難民審査手続きを強化し、トランプ氏の国境政策によって引き離された家族を再び一緒にするための対策本部を立ち上げる。ロイターはこのメモを入手した。

一方、バイデン政権の当局者が就任前に配布した資料によると、議会に送付した法案は、米国に居住する推定1100万人の不法移民の多数が8年かけて市民権を取得する道筋が示されている。

1月1日時点で米国に居住し、一定の基準を満たしている移民は5年間の滞在資格を与えられ、その後に米国永住権(グリーンカード)が付与される。追加で3年経過すれば市民権取得を申請できるようになるという内容。

自然災害および内戦などから逃れてきた特定国の移民向けの「一時保護資格(TPS)」やDACAの対象者、一部の農場労働者に対しては合法的な資格を得るまでの期間をより短くする。

民主党は下院の多数派を占めるが、上院の議席数は定数の半分である50議席にとどまっている。上院議長を務めるハリス副大統領が決定票を握るものの、同法案の可決は容易ではないとみられる。過去の移民制度改革は超党派の支持がなかったため頓挫している。

一方、新型コロナウイルス対策として米疾病対策センター(CDC)が打ち出したカナダまたはメキシコ経由の入国規制は廃止しない。 米税関・国境取締局(CBP)によると、2020年3月以降、メキシコ国境で38万人以上が米国境警備当局によって自国やメキシコに送り返されている。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

BBC理事長、トランプ氏の訴訟に「断固闘う」と表明

ワールド

米SEC、株主提案の除外審査を一時停止 アクティビ

ビジネス

ホンダ、北米工場24日から通常稼働 半導体不足で生

ワールド

トランプ氏、対ロ制裁法案に署名へ 最終権限保持なら
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中