ニュース速報

ワールド

ファイザーのコロナワクチン、英が世界最速承認 来週接種開始へ

2020年12月03日(木)05時31分

 12月2日、英政府は、米ファイザーが独ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスワクチンの使用を承認した。11月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic/Ilustration)

[ロンドン 2日 ロイター] - 英政府は2日、米ファイザーが独ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。来週から接種が始まる見通しだ。ファイザーの新型コロナワクチンの承認は世界初で、米国や欧州連合(EU)に先駆けて接種が始まる。

ハンコック保健相は、来週初めからワクチン接種プログラムが始まる予定で、病院は受け入れ態勢を整えていると述べた。

英ワクチン委員会は、医療従事者、高齢者施設の入居者など優先接種の対象となるグループの中から、最初に接種するグループを決定する。

英国はファイザーと4000万回分のワクチン供給で契約を締結しているが、初回はベルギーのファイザー製造施設から80万回分のワクチンが供給される見通し。ジョンソン首相は、接種は当然、強制されないとしながらも、「接種を受けるよう、国民に強く推奨する」と述べた。

ファイザーのブーラ最高経営責任者(CEO)は、オンライン会議で「来年末までには必要な量以上のワクチンが確保できるとかなり楽観している。当社として製造能力の向上に向け努力しているが、向こう数カ月間でどれだけ向上できるかが課題になる」と表明した。

また「ワクチンが将来的に最も有効な感染予防対策になることは間違いない」としながらも、各国政府には当面、その他の予防対策を怠らないでほしいと強調。「それほど遠くない将来、日常に戻る日がやってくるはずだが、今はその時ではない」と訴えた。

<世界最速のスピード認可>

ファイザーは主要国当局にワクチンの緊急使用許可を申請しているが、英医薬品当局は、世界に先駆けて緊急使用を認めた。

規制当局の英国医薬品庁(MHRA)は「ローリング・レビュー(逐次審査)」を実施し、治験データの入手と同時に審査を進めていた。

MHRAのレイン長官は「いかなる手続きも省いていない」と強調。6月に初のデータを受け取ってから厳密な審査を行ってきたとし、「安全がわれわれのモットーだ」と述べた。

ファイザーのワクチン部門責任者、ラルフ・レネ・レイナート氏は、他の国も英国に続くとしながらも、「これは国同士の競争ではない」と指摘。「ファイザーには全ての規制当局と、あらゆるデータを共有する用意がある」と述べた。

英国のスピード認可についてEUは、証拠に基づき時間をかけて審査するのが適切との考えを表明。ドイツのシュパーン保健相は、EU加盟各国は英国と同様の緊急使用許可を承認することはできるが、EUは全体として承認することを選んだとし、「承認に対する信頼の促進が重要だと考えている」と語った。

一方、米国のアザー厚生長官は、英国の承認で信頼感が増すとして支持を表明。FOXビジネス・ネットワークに対し「別の国の独立規制当局がこのワクチンの安全性と効果性を認可したことは、米国民にとり大きな安心材料となる」と述べた。

米国では、食品医薬品局(FDA)の諮問委員会が10日に緊急使用許可を勧告するか検討する予定。欧州医薬品庁(EMA)は29日までに承認する可能性があるとしている。

ファイザーは、ビオンテックと開発したワクチンに95%の有効性が確認されたとしている。

ファイザーは、英国の緊急使用許可は新型コロナとの戦いにおける歴史的瞬間だと表明。ビオンテックのサヒン最高経営責任者(CEO)は「各国の規制当局に提出したデータは、科学的に厳格かつ高度に倫理的な研究開発プログラムの結果だ」と述べた。

ビオンテックは、FDAとEMAが今月半ばにも決定を下す見通しとした。

有力なワクチン候補としては、ファイザーと同じくメッセンジャーRNA(mRNA)技術を利用した米モデルナのワクチン、英アストラゼネカのウイルスベクターワクチンがある。モデルナは、後期治験で94%の有効性が確認されたと報告。アストラゼネカは平均で70%、最大90%の有効性が判明したとしている。

このほか、中国はすでに3種類の治験中のワクチンに緊急使用許可を出し、7月から約100万人に接種している。ロシアも、国内で開発した「スプートニクV」を最終段階の治験終了を待たずに8月に医療従事者に接種を開始した。プーチン大統領はこの日、国民に対する大規模な新型コロナウイルスワクチン接種を来週開始するよう、当局に命令した。接種は強制ではなく、本人の意思に基づいて行われる。

英国のジョンソン首相の報道官は、ワクチンの安全性を証明するため、首相がテレビ放送でワクチン接種を受ける可能性もあると指摘。ただ、首相よりもワクチン接種が必要な人を優先する考えを示した。

<輸送問題>

ファイザーがビオンテックと開発したワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づくもので、セ氏マイナス70度の超低温でで保管する必要があるため、輸送面での懸念が出ている。

ビオンテックは、ワクチンを温度管理が施された容器に収納して英国に航空機または船舶を利用して出荷すると表明。ビオンテック幹部のショーン・マレット氏によると、ワクチンは通常の冷蔵庫で最大5日間保存が可能。6時間までならセ氏プラス2─8度の環境に置かれても効果は失われない。

*情報を追加します

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中