ニュース速報

ワールド

イスラエルとUAE国交正常化で合意、仲介の米大統領「歴史的」

2020年08月14日(金)06時23分

米トランプ政権は13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化で合意したと発表した。仲介役を務めたトランプ米大統領は「歴史的な合意」と称賛した。ワシントンで1月撮影(2020年 ロイター/Brendan McDermid)

[ドバイ/エルサレム/ワシントン 13日 ロイター] - イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)は13日、国交を正常化し、新たに幅広い関係を築くと発表した。パレスチナ問題やイランとの紛争など中東の政治秩序を塗り替える動きで、仲介役を務めたトランプ米大統領は「歴史的な合意」と称賛した。

イスラエルは合意の下、ヨルダン川西岸の併合計画を凍結する。

トランプ大統領はツイッターへの投稿で「大々的な打開に達した!米国の偉大な友好国であるイスラエルとUAEによる歴史的な和平合意だ」と述べた。

3カ国が長らく続けてきた協議はこの日、トランプ大統領、イスラエルのネタ二ヤフ首相、UAEアブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド皇太子が行った電話会談で合意に達した。

共同声明では「イスラエルとUAEの関係性を完全に正常化させることで合意した」とし、合意により、両国が「中東地域の素晴らしい可能性を解き放つ新たな道筋を描くことができる」とした。

トランプ大統領は「誰もが不可能と考えていた。49年をへて、イスラエルとUAEは国交を完全に正常化する」と述べ、イスラエルとUAEの代表による署名式をホワイトハウスで数週間以内に開催する計画とした。さらに、中東地域の他国とも同様の和平合意を巡り協議していると付け加えた。

ネタニヤフ首相はツイッターへの投稿で「イスラエルにとって歴史的な日だ」とコメントした。ムハンマド・ビン・ザイド皇太子も「合意によって、イスラエルによるさらなるパレスチナ併合は停止される。両国の協力や二国間関係の構築に向けた行程表の策定でも合意した」と述べた。

3カ国の共同声明によると、イスラエルとUAE両国の代表が数週間以内に会合し、投資や観光、直行便の運航、安全保障などを巡る二国間合意書に署名する。大使館設置や大使の派遣も近く開始する見通しという。また、新型コロナウイルスのワクチンや治療法の開発で協力を拡大する。

交渉に携わったポンペオ米国務長官は、イスラエルとUAEの合意は「正しい道筋」向けた「大きな」一歩と称賛した。

これに対し、パレスチナ自治政府のアッバス議長は合意を拒否。アブ・ルデイナ報道官は「エルサレムやアルアクサ・モスク(イスラム教礼拝所)、パレスチナの大義に対する裏切り」とした。

パレスチナ自治政府高官のハナン・アシュラウィ氏は、合意が間近に迫っていたことをパレスチナ側が認識していたかとの問いに対し、「知らなかった。われわれは不意打ちを食らった。完全な裏切りだ」と述べた。

パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの報道官は「国交正常化はパレスチナの大義に対する背任であり、イスラエルによる占領のためだけのものだ」とした。

UAE高官はイスラエルとパレスチナに対し、交渉を再開するよう求めた。

トランプ大統領のブライアン・フック特使は、合意はイランにとって「悪夢」になると述べた。

イラン当局者は、合意は中東地域の平和を確約するものではないと言及。イラン議会議長の顧問、ホセイン・アミール・アブドラヒアン氏はツイッターで、「パレスチナの大義に背を向けたUAE政府の動きには正当性がない。この戦略的な過ちにより、UAEはシオニズムの火に包まれることになるだろう」と述べた。

中東和平を巡る合意はイスラエルとヨルダンが1994年に締結した和平条約以来。11月の米大統領選で再選を目指すトランプ大統領にとっては、外交政策における実績という重要なアピール材料となる。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

FIFAがトランプ氏に「平和賞」、紛争解決の主張に

ワールド

EUとG7、ロ産原油の海上輸送禁止を検討 価格上限

ワールド

欧州「文明消滅の危機」、 EUは反民主的 トランプ

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中