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アングル:サバイバル避難所密かに人気、米国で深刻な社会不安

2019年12月30日(月)15時07分

サバイバルキャンプから眺める山。9日撮影(2019年 ロイター/Adria Malcolm)

[フォーティテュードランチ(米コロラド州) 23日 ロイター] - レイヨウや牛が点々と広がるコロラド州コロラド渓谷の景色にAR-15ライフル銃を向けながら、ドルー・ミラー氏は自分の新しいサバイバルキャンプ「フォーティテュード牧場」の会員がどのようにして終末の時代を生き抜くかを説明する。

米空軍の元情報将校のミラー氏によると、山岳部の森林の下に建設中の牧場は、生物工学的なパンデミック(世界的な大感染)から送配電網への攻撃に至るあらゆる出来事から逃げようとする米国人のシェルターになる。

年間1000ドル前後の会費を支払えば好きなときにキャンプで休暇を過ごせるし、社会崩壊に際しては避難所として利用することができる。

「武器をたくさん持ち、たくさんの監視所や防御壁の場所にメンバーを配置しさえすれば、あえて戦闘をする必要があるとは思わない」

ミラー氏がチェーン経営するサバイバルキャンプの広がりから、歴史的に反政府主義のサバイバリスト(生存主義者)と関係してきた「プレッパー(大災害や戦争の終末的危機への備えに取り組む人々)」の運動が米国民の主流をも次第に引き付けつつあることが浮き彫りになる。近年はこうした運動が、再生可能エネルギーや自給自足、持ち物を必要最小限に減らすミニマリスト主義の暮らし、気候変動への懸念などへのミレニアル世代の関心と重なるようになった。

そして、そこに政治が登場する。

ミラー氏によると、来年11月3日の大統領選の頃に米国で政治的分断が急激に深化するとの懸念が顧客の間で強まっている。ミラー氏は「大統領選後に大規模で長期的な社会不安が生じかねないとの懸念が広がっている。『この新大統領は気にくわない。認めない』と皆が言い出すような状況だ」と話す。最悪の場合は「内戦」が起きるシナリオも想定しているという。

フォーティテュード牧場はありそうもない出来事、もし現実になれば助かる見込みがないことに備えていると疑いを挟む声もある。

ニューヨーク大学の疫学専門のロビン・ガーション教授は、天災や大停電に対する備えには合理的なレベルのものがある一方で、極端過ぎる備えをしようとする運動も存在すると指摘。地球規模のパンデミックや核戦争を乗り切るのに、ある敷地内で見ず知らずの人々と団結して暮らすというのは、誰にとっても最悪の結末になると予想する。

「現代の暮らしに慣れた人々にとっては、生活の質が維持できなくなり、生存価値がないような水準まで生活が劣化するだろう」と語った。

<大口径ライフル>

太陽光発電設備付きのフォーティテュード牧場は、都市部や郊外のぜい弱さが心配なミドルクラスの米国人に応える。伝統的な生存主義者たちと異なり、多くは自給自足の訓練を受けておらず、狩りの仕方が分からない者もいる。牧場は年間会費のほか、護身用のAR-15ライフル1丁か連射式ショットガン1丁の所持を主要な要件とする。

牧場は3カ月分の食糧を備蓄するほか、ヤギやニワトリを飼う。社会崩壊の危機に見舞われたときには、メンバーはミラー氏のような幹部の命令に従う。任務には薪や木の実を集めたり、獲物を仕留めたり、野菜作りも含まれることになる。

ミラー氏は、法と秩序が崩壊すれば都市部から略奪者がなだれ込んでくるとみており、牧場に強力な火器を備えるつもりだ。この新しいコロラドのキャンプには既に、装甲車に搭載できる大口径ライフルがある。

サザンイリノイ大のチャッド・ハデルストン人類学教授は、こうした不安感は「終末論的な絵空事」だと話す。「世界中の研究は、まず何よりも先にこうした共同体が出現することを示している」とし、ハリケーン「カトリーナ」のような大災害後についての研究などを根拠に挙げた。

ミラー氏によると、フォーティテュード牧場の会員はあらゆる人種・民族系がいて総勢175人前後。ビジネスや軍の経歴を持つ人が多く、大半が政府を信用していないという。

ミラー氏は牧場の正確な位置を明かさないよう求めた。今はコロラド州に2カ所とウエストバージニア州に1カ所があるが、投資家を見つけられたら、さらに10州ぐらいまで増やせたらいいと考えている。

<特殊集団>

コロラド州キャッスルロックの会員のキキ・バンディラさん(53)は医療保険の仕事をしている。現代の技術への過度の依存を懸念しており、フォーティテュード牧場は生き残るための保険と考えている。「われわれは皆、一定程度の備えが必要だ。こうした動きは少しずつ主流になっていると思う。右派にしろ左派にしろ、米政府で起きているのは混沌状態だと思うからだ」と話した。

名をトムとだけ明かした、メリーランド州で住宅業を営む52歳の男性は、2021年に経済が破滅的な状態に陥るのを恐れ、交際相手と子供たちを連れて行く場所が欲しいと考えている。「そんなときに諦めようとする連中は多いだろうが、そんな連中のほとんどは、あの牧場にいようとはしないだろう」

米国民のどのぐらいが、こうした人々なのかを把握するのは難しい。多くは表だって活動していないからだ。しかしレディー・トゥー・ゴー・サバイバル社のロマン・ザラシェフスキ最高経営責任者(CEO)といった業界関係者は、活動に対する関心は高まっていると話す。

ザラシュエフスキ氏によると、同社が手掛けるサバイバルキット入りバッグやガスマスクの販売は「リベラルなプレッパー」からの引き合いで2─3倍に増えている。「こうした(リベラル系の)人々はトランプ氏がやっていることを懸念している」と説明し、全面的な内戦の勃発はあり得ないことではない」とまで語った。

プレッパー活動を行っている人々には、民間の運営するサバイバル目的のコミュニティーは万人向けではないかもしれないとの声もある。

緊急事態に備えてファミリーを訓練したり装備を販売したりするロッキー・マウンテン・リーディネスの経営者ドン・ロジャーズ氏は「互いにまったく見知らぬ100人ぐらいの人を1カ所の施設にぶち込むのは課題が大きいだろう」と述べ、「人々を統率する特殊な集団と特殊な指導者が必要になる」との見方を示した。

フォーティテュード牧場のミラー氏は、この牧場がまさにそうした集団になると信じている。「ここに来なければならなくなったということは、外では本当にひどいことが起きているということだ。そんなときに一体どこに行くつもりかね」と話した。

ロイター
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