ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ大統領弾劾、共和党が期待した追い風吹かず

2019年12月19日(木)13時19分

 12月17日、2020年米大統領選で再選を目指すトランプ大統領陣営は、民主党が進めるトランプ氏の弾劾はむしろ大きな追い風だと歓迎している。写真は米議会前で弾劾調査反対を訴えるトランプ氏支持者。10月17日、ワシントンで撮影(2019年 ロイター/Carlos Jasso)

Chris Kahn Tim Reid

[16日 ロイター] - 2020年米大統領選で再選を目指すトランプ大統領陣営は、民主党が進めるトランプ氏の弾劾はむしろ大きな追い風だと歓迎している。支持者や無党派層が弾劾によって逆にトランプ氏に投票する動きを強めると見込んでいるためだ。実際に1988年のクリントン元大統領の弾劾では弾劾裁判のさなかにクリントン氏の支持率が上昇した。

しかし過去数カ月の世論調査結果を見ると、これまでのところ有権者の間にトランプ陣営の期待するような動きは起きていないようだ。

トランプ氏は今週中にも弾劾訴追される見通し。歴代大統領で弾劾訴追を受けるのは3人目となる。その後は上院で弾劾裁判が行われるが、上院は共和党が過半数の議席を握っており、トランプ氏に有罪判決が出る公算は小さい。

ロイターが入手したトランプ陣営の内部文書や関係者への取材によると、民主党の弾劾調査開始後、トランプ陣営は全国各地の共和党関係者に取り上げるべきテーマについて指示を送り、弾劾という危機を政治的な追い風に転じようとしている。

ブラッド・パースケール選対本部長は12日、「法を犯していない大統領をおとしめようする動きがある時にはいつでも、支持者は何らかの形でやり返す」と述べた。

トランプ陣営が視野に入れているのがクリントン氏弾劾のケースだろう。ギャラップの調査によると、ホワイトハウス実習生との不適切な関係で弾劾訴追されたクリントン氏は、弾劾裁判中に支持率が73%と最も高くなった。

しかし今回は状況が大きく異なっている。トランプ氏の支持率は40%近辺で、過去3カ月ほとんど変化していない。さらにトランプ氏の中核的な支持層である高卒以下の白人の有権者でも、支持率はこの数カ月横ばいで、地方での11月の支持率は6月より下がった。

ロイター/イプソスの調査では、民主党員がトランプ氏の弾劾に対して今年初めの時点よりも熱心になり、来年の大統領選への影響をあまり懸念しなくなっている様子も読み取れる。

民主党員の間ではこの数週間、弾劾への支持率が45%程度で、9月末時点から12%ポイント上昇。12月9、10日に実施した最新の調査では、トランプ氏を弾劾すべきだとの回答が78%に達した。

この間、共和党員の間でトランプ氏の弾劾への反対はほぼ横ばいで、最新の調査では弾劾すべきではないとの回答が約82%だった。

さらに12月の調査では、来年の大統領選でトランプ氏敗北の確率が下がるなら弾劾を断念すべきだとした民主党員は27%にとどまり、10月初旬から7%ポイント低下した。

こうした世論調査結果などを踏まえて、重要な選挙区の共和党当局者の一部は弾劾を巡る議論が選挙戦で有利に働くとの主張に懸念を抱くようになっている。

ウィスコンシン州ウォキショー郡の共和党委員長のテリー・ディトリック氏は、弾劾手続きが長引けば有権者の関心が経済の好調などトランプ氏にとって政治的な最大の強みからそれる恐れがあると警告。「われわれウィスコンシン州の有権者はただ弾劾が終わることを望んでいる」と述べ、そうなれば州内の有権者に経済の好調、低金利、過去最低となったアフリカ系米国人の失業者数などトランプ氏の功績を思い起こさせることができると訴えた。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を

ワールド

英独首脳、自走砲の共同開発で合意 ウクライナ支援に

ビジネス

米国株式市場=S&P上昇、好業績に期待 利回り上昇

ワールド

バイデン氏、建設労組の支持獲得 再選へ追い風
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中